二銭銅貨

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09国立劇場2月/鑓の権三重帷子/文楽

2009-02-17 | 歌舞伎・文楽
09国立劇場2月/鑓の権三重帷子/文楽

(第1部)
鑓の権三重帷子(やりのごんざかさねかたびら)   
浜の宮馬場の段
浅香市之進留守宅の段
数寄屋の段
岩木忠太兵衛屋敷の段
伏見京橋妻敵討の段

文雀がおさゐ(オサイ)。

この茶道宗家の中年の妻は丸本によれば色香の残る美人。人形はふっくらとした顔立ちで、目元がパッチリしている。パアッと明るく純で情熱的な表情。娘の髪をかいがいしく見てやる場面が最初の見せ場。母としてのおさゐの庶民的な気持ち。この時代の太平の気分。

このおさゐが和生が遣う権三と、さしでやり取りする場面がある。浅香市之進留守宅の段では、ほんのりと薄赤い色合いの恋を匂わせる。立ち居振る舞いは上品だけれども、その動きは滑らかで色っぽさが濃い。かわいい顔立ちとほのかな色を感じるそのしぐさ。

次の数寄屋の段では、これが一変する。暗い夜、水もしたたるような若い男の権三と密室に2人でいる。障子に映る2人の影。離れている。一瞬交錯する。丸本には別に怪しいことをしているとは書いてない。

でも状況が状況だ。蝋燭の赤く鈍く輝くその明かりは恋の炎か、おさゐの赤い恋の色なのか。道ならぬ恋の炎なのか。2人の恋、色の道、炎が燃える。激情が走る。燃焼をする。やけどをする権三とおさゐ。

おさゐの娘婿としての権三に対する恋心は本人にも分からない位に心の奥底に隠されている。あくまでもこの権三との不義密通は、本当のことではなく、世間の誤解だという立場は崩さない。権三は娘の婿にと考えているのだから。けれども数寄屋の段の場面では情熱が吹きこぼれていた。恋の嫉妬、情念のうらみが噴出していた。文雀のおさゐが和生の権三にしがみついて、噛みついていた。

最後の伏見京橋妻敵討の段のおさゐはあっさりしている。けれども、それだけに可哀相だ。斬られて斃れるおさゐは、文雀に置いてけぼりにされるけれども、白く美しい姿で舞台中央に横たわっていた。美しい顔はまだ生きていた。文雀が居なくても生きている。まるで少女のようだった。

綱大夫が病気のためお休みで、その前を語っていた津駒大夫が連続して語った。

09.02.11 国立劇場
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