フィレンツェの悲劇/スペインの時/新国立劇場オペラ研修所公演2012
作曲:ツェムリンスキー(フィレンツェの悲劇)
ラヴェル(スペインの時)
演出:三浦安浩、指揮:飯守泰次郎
演奏:東京シティ・フィル
出演:
(フィレンツェの悲劇)
グィード:日浦眞矩
シモーネ:高橋洋介
ビアンカ:今野沙知恵
(スペインの時)
コンセプシオン:上田真野子
ゴンザルヴェ:糸賀修平
トルケマダ:村上公太
ラミーロ:村松恒矢
ドン・イニーゴ・ゴメス:北川辰彦
誰もいない街の片隅に、輪転がしの少女の影が壁に映っているキリコの「通りの神秘と憂愁」の絵をモチーフにしたような美術。絵画と同じように舞台下手が坂になっていて、そこに演劇研修所とオペラ研修所のメンバーが群集として登場し、暫く芝居をする。上手にはボーッとして魂の抜けたようなビアンカ。このビアンカに加えて他の登場人物2人による芝居も始まる。やがて、忘れた頃にようやく演奏が始まる。この「フィレンツェの悲劇」の後の休憩後に、引き続き「スペインの時」が同じセット、群集で始まる。
美術、演出ともに若干シュールな感じだと思ったし、また若干読み替えているような印象も持った。ややけだるく、倦怠感ただよう無機質な殺伐とした印象だ。干からびたような人間関係、見かけだけの優しさや親切、恋愛、友情。前半は悲劇、後半は喜劇だけれども、両方を通してそういった虚無的な印象の残る演出だった。
前半の最後の方の決闘の場面では、坂道に光るファイバーを使った即席のリングが作られて、そこで行われた剣による死闘の場面が面白かった。
ビアンカの今野は魂の抜け殻のようなボーっとした芝居が印象的で、グィードの日浦の芝居は尊大でいやらしさが良く出たものだったが歌は真面目で強いテノールだった。シモーネの高橋は苦悩を過剰に芝居する迫力あるバリトンだった。このオペラの主役として芝居をしっかりと支えた。ニヒルなキャラクターが良く似合う人だ。
後半のコンセプシオンの上田はかわいらしいソプラノのファムファタールで、ゴンザルヴェの糸賀は迫力あるバリトンで芝居も堂々としてベテランらしかった。ゴメスの北川は変態でイタリアンな詩人のテノールで、ちょっと気持ち悪い。トルケマダの村上は真面目な感じ。ラミーロの村松はマッチョで素朴なロバ引きだけれど、これまた変態な感じだった。
黙役として倉本絵里がキューピッド役、林よう子が少年役として登場した。全編にからむ出演であったが、歌をじゃませず適度で効果的な芝居だった。特にキューピッドのロボット歩きが印象的で可愛かった。やたらとカップルを作りまくる普段はちょっとひねくれた、すれからしのキューピッドなんだけれども、どうもラミーロが好きらしく、その時はロボット歩きになってしまうらしい。林よう子も最初から目立つ芝居で、元気のいい悪がきっぽい少年をやっていた。この研修所の歌手の養成では芝居に力を入れている事が感じられた。
演劇研修所の群集の中では彫像役をやった2人が印象的だった。両方とも動き出すまで、そうとは分からなかった。
演奏は間を長めに取る、力強いものだった。
12.03.10 新国立劇場、中劇場
作曲:ツェムリンスキー(フィレンツェの悲劇)
ラヴェル(スペインの時)
演出:三浦安浩、指揮:飯守泰次郎
演奏:東京シティ・フィル
出演:
(フィレンツェの悲劇)
グィード:日浦眞矩
シモーネ:高橋洋介
ビアンカ:今野沙知恵
(スペインの時)
コンセプシオン:上田真野子
ゴンザルヴェ:糸賀修平
トルケマダ:村上公太
ラミーロ:村松恒矢
ドン・イニーゴ・ゴメス:北川辰彦
誰もいない街の片隅に、輪転がしの少女の影が壁に映っているキリコの「通りの神秘と憂愁」の絵をモチーフにしたような美術。絵画と同じように舞台下手が坂になっていて、そこに演劇研修所とオペラ研修所のメンバーが群集として登場し、暫く芝居をする。上手にはボーッとして魂の抜けたようなビアンカ。このビアンカに加えて他の登場人物2人による芝居も始まる。やがて、忘れた頃にようやく演奏が始まる。この「フィレンツェの悲劇」の後の休憩後に、引き続き「スペインの時」が同じセット、群集で始まる。
美術、演出ともに若干シュールな感じだと思ったし、また若干読み替えているような印象も持った。ややけだるく、倦怠感ただよう無機質な殺伐とした印象だ。干からびたような人間関係、見かけだけの優しさや親切、恋愛、友情。前半は悲劇、後半は喜劇だけれども、両方を通してそういった虚無的な印象の残る演出だった。
前半の最後の方の決闘の場面では、坂道に光るファイバーを使った即席のリングが作られて、そこで行われた剣による死闘の場面が面白かった。
ビアンカの今野は魂の抜け殻のようなボーっとした芝居が印象的で、グィードの日浦の芝居は尊大でいやらしさが良く出たものだったが歌は真面目で強いテノールだった。シモーネの高橋は苦悩を過剰に芝居する迫力あるバリトンだった。このオペラの主役として芝居をしっかりと支えた。ニヒルなキャラクターが良く似合う人だ。
後半のコンセプシオンの上田はかわいらしいソプラノのファムファタールで、ゴンザルヴェの糸賀は迫力あるバリトンで芝居も堂々としてベテランらしかった。ゴメスの北川は変態でイタリアンな詩人のテノールで、ちょっと気持ち悪い。トルケマダの村上は真面目な感じ。ラミーロの村松はマッチョで素朴なロバ引きだけれど、これまた変態な感じだった。
黙役として倉本絵里がキューピッド役、林よう子が少年役として登場した。全編にからむ出演であったが、歌をじゃませず適度で効果的な芝居だった。特にキューピッドのロボット歩きが印象的で可愛かった。やたらとカップルを作りまくる普段はちょっとひねくれた、すれからしのキューピッドなんだけれども、どうもラミーロが好きらしく、その時はロボット歩きになってしまうらしい。林よう子も最初から目立つ芝居で、元気のいい悪がきっぽい少年をやっていた。この研修所の歌手の養成では芝居に力を入れている事が感じられた。
演劇研修所の群集の中では彫像役をやった2人が印象的だった。両方とも動き出すまで、そうとは分からなかった。
演奏は間を長めに取る、力強いものだった。
12.03.10 新国立劇場、中劇場