先日、早朝、あの人の「元カノ」が、
いつも利用する駅ではない方角から現れ、
その細い体が、横断歩道を渡って来るのが見えた。
行きつけのパン屋にでも、寄ったのだろうかと、
最初は、何も疑問に思わず、後ろ姿を目で追っていたのだが、
職場ビルの前まで来た時の、彼女の行動に、私は凍りついた。
反対方向から来る誰かに向かって、片手を上げたのだ。
それは、さっきまで一緒にいた誰かに、又会って、
「じゃっ。」って感じだった。
慌てて走ったが、すでに彼女はビルの中、
知らないオヤジが自転車で、私の横を通り過ぎた。
私はその瞬間、何の根拠も無いのに、
2人は復活したと、予感した。
彼女が合図した、見えぬ相手は、
あの人じゃないのか。
彼女と別れたはずの、
「あの人」しか考えられなかった。
あっち側にもう一つ、入口があるとしたら、
あの人の部署の人間しか、出入りしないはずなんだよ。
2人は、駅まで一緒に来て分かれ、
彼女は大通り、あの人は裏通りを、
別々に歩いて来たんじゃないのか。
あのカフェでパンを買うのは、7時前じゃムリだろう。
もう、それ以外、何も思いつかなかった。
「元カノ」じゃなかったわけか。
彼女は又もや、「今カノ」か。
キャパの無い男が、懲りてないのか。
「仕事のジャマだ。」「1人になりたい。」と言って、傷つけた彼女と、
今度は、結婚でもするつもりか。
私があなたに、「遺伝子を残さないなんて残念。」と伝えたから、
アマノジャクは、子供でも欲しくなったか?
勝手な男だな。
彼女も彼女で、別れて寂しいからって、
スキー仲間の先輩と付き合ってたのは、ムリがあったか?
あの人を激怒させた、
男友達と毎年行くスキーツアーは、あきらめるのか?
分かっていたよ。
彼女は、あなたと別れた瞬間から、
あなたの事が、ずっと好きだった!
よりによってその日、彼女の席は、私の真向かいだった。
職場で一番の、おしゃべりバカが、
親しくもない彼女に、何か伝達していた。
私に見えないように、しゃがみ込んで。
(この女が、掃除のおじさんとも仲良くしてるのを見た時はゾッとした。)
一貫性の無い、八方美人のYさんが、私に気づき、
階段を降りる早さを変えたのを、背中で感じた。
それらがよけい、彼女の周りで動く「秘密」を感じさせた。
全てが悲しかった。
私が、紙ロボットみたいな男としゃべってる時、
2人は、楽しんでたわけか。
自分が醜い分、私の怒りは頂点に達した。
2人して、私をバカにして!
(実際2人は、私に何もしていない。)
半年ぶりに切ったばかりの髪が、もうバサバサなのも、
私の怒りを、増長させた。
もう話しかけまい、と思っていたあの人に、
思わずメールした。
復活してたんですか?
バカか、私は。(笑)
でも、久しぶりに、静かに泣いたよ。
あの人を、誰にも取られたくなくて。