10年前に、30代で亡くなった、
元同僚の墓に、初めて行ってみた。
当時、彼女の家族は、激しくショックを受け、
職場の人の訪問も香典も拒否した。
しかし、おせっかいなおしゃべり女は、
全員から香典を集め、
聞いてもいない寺まて、私に教えてきた。
こんな女が、かつて親しい友人だったかと思うと、イラッとした。
亡くなった本人を弔う気持ちはあっても、
元ラーメン屋のせいで、行く気になれなかった。
苦々しいたき火カフェの体験があるので、
墓の場所を教えてもらえるのか、
あらかじめ、寺に電話して聞いてみた。
有名人にしろ、誰にしろ、場所を教えるだけなら、
個人情報漏洩にはならないらしい。
墓参りをよそおって、ハカイシ(墓石)を、
ハカイシ(破壊し)に行ったら、どうするんだ。
甘いね。
野口健なら、疑うね。(笑)
石材でできた小さい動物が、
彼女を取り囲むように置かれていた。
彼女が寂しいだろうと、誰かが置いたのだと思うと、
よけい寂しくなった。
モスバーガーを、トマト抜きにするほど、
好き嫌いが多かった彼女。
カラオケで、「デカメロン」を、
ダラダラ歌うのが面白かった。
いつも穏やかだったその性格が、ストレスを吸収し、
彼女を、病へ導いたのではないかと、私は思っている。
「Aちゃん、〇〇に移転だって。どうしたらいい?」
声に出して言ってみた。
山の方から、ホーホケキョ。
青い空には、ひこうき雲。
まるで、ユーミンの歌みたいじゃないか。
「生きてるだけ、マシだよね。」
そう思いたくて、私は、ここまで来たのだ。
でも、寂しさだけが増して、自分が死んでも、
墓石の下には入りたくないと思うだけだった。
アンジーの墓にも、ついでに行く事にした。
階段と急な坂道は、小学生のハイキングみたいだ。
心細い山道は、昼間なのに、不審者が出そう。
身内に、もっとハッキリ行き先を言うべきだったと、
本気で不安になった。
管理事務所に人はいて、
墓の場所を確認したが、まだ先だった。
たどりついた公園の、メイン広場には誰もいない。
石碑の前まで来た時、下の方に、
大型バイクが止まったので緊張した。
ここで襲われても、誰も気づいてくれないよ。
急な階段の上にある夫婦の墓は、シンとしていた。
写真を撮っていたら、
体格の良い、サングラスの老人がやって来た。
年寄りでも警戒するくらい、狭い場所だった。
話しかけてきたジイさんは、
週に3回ほど、散歩していると言う。
雑学や地域の事を、やたら正しく説明しようとする。
寺で、ウグイスが鳴いていたと話したら、
「ウグイスは、本当は、スズメみたいで汚いんだ。
みんな、メジロと勘違いしてるんだよ。
(スマホで)調べてみな。」
あ、本当だ。
ウグイスは、スズメみたいなカーキ色。
メジロは、綺麗な抹茶色。
ずっと前に、この場所で、
彼女連れの有名人と会ったと言う。
ムロツヨシと言ったかと思ったら、
アスリートの名前だった。
「あの、砲丸投げの…。」
「違う。砲丸投げは、球を持って投げるの。あれは、ハンマー投げ。」
「ウグイスとメジロみたいな事になっちゃいました…。」
恥ずかしい。
似てるようで勘違いって、けっこうあるのね。
長話していたら、墓の後方から、
「歩く会」の80人の年寄りが、ぞくぞくとやって来た。
最初の人達だけ、説明を受けていたが、
後から来る人達は、アンジーをスルーして行った。
寂しい公園は、あっという間ににぎやかになった。
東屋のベンチで、尺八の練習をしている人もいた。
たまに、音が止んだりすると、
たとえ、吹いていた曲が「トトロ」であっても、
豹変するんじゃないかと怖かった。
後から、ネットで知ったのだが、
10年ほど前、この公園の港の見える場所で、
夫婦の首吊り自殺があったらしい。
わっ、あそこかよ!!
荷物、置いちゃったよ!!
夜景を見に来た人が、発見したらしいが、
よく見えなくて、遺体に話しかけちゃったらしい。
あんなとこ、夜歩くなんて、ありえない!!
アンジーと言えば、
アンジェラ・アキの「手紙」って、すごいな。
外国人の風貌で、もっとも日本人らしい言葉で、
あんなピュアな気持ちを、大人になってから歌えるなんて。
それに、彼女のカジュアルファッションて、
やたらオシャレに見えるんだよね。
拝啓 アンジー、私を守ってよ。
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