令和5年3月17日
侍ジャパンがWBCの準々決勝でイタリアを9-3で振り切りベスト4進出
先発の大谷翔平は「3番・投手」で出場。
負けたら終わりの試合にかける思いが伝わってくる熱投だった。
1球投げるごとにうなり声を上げ、直球は最速164キロを計測。
5回途中までに5三振を奪い、2失点と先発の役割を果たした。
闘争心を前面に出す一方で、「打者・大谷」は冷静だった。
0-0で迎えた3回1死一塁の2打席目。
遊撃手を二塁ベースの右に置くイタリアの極端な守備陣形を逆手に取り、がら空きの三塁方向へセーフティーバント。
絶妙なアイデアが相手の悪送球を誘い、一塁走者の近藤健介は三塁に到達。大谷の奇襲が球場に漂う重苦しい空気を変えた。
続く吉田正尚の遊ゴロの間に近藤が本塁生還すると、岡本和真が左中間に自身今大会1号の3ラン。
一挙4点を先制して試合の主導権を握った。
岡本は5回も右中間へ適時二塁打。
試合後のお立ち台では、インタビュアーの質問に「最高です」を5回繰り返してスタンドの笑いを誘うと、
決勝ラウンドで侍ジャパンを代表して抱負を聞かれ、「えー、もう…最高です!」と自身の世界観を貫いた。
明るい材料はこれだけではない。
打撃不振で、イタリア戦は5番で先発した村上宗隆が5回に5点目の左中間適時二塁打。
今大会初の長打で肩の荷が軽くなったのだろう。
7回にも左翼のグラブをはじく二塁打で出塁してマルチ安打。
牧秀悟の右邪飛で三塁にタッチアップでヘッドスライディングするなど、好走塁も光った。
侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者は、「これまでの村上は甘い球を見逃して難しい球を振るケースが多かったが、
5回の打席は初球から積極的に振りにいって逆方向に適時二塁打を放った。
結果を出そうと焦りもあり、力んで引っ張りの意識が強かったが、広角に長打を打てる選手です。
本来の形を取り戻して、完全復活は近いと思います」と期待を込める。
試合前のスタメン発表では、どよめきが起きた。
源田壮亮が「8番・遊撃」で先発出場。
10日の1次ラウンド2戦目・韓国戦で、牽制の帰塁の際に負傷交代し、
病院で「右手小指骨折」の診断を受けただけに強行出場は相手ベンチも予測できなかっただろう。
バックネット裏で見守ったメジャーの関係者は「メジャーだったら考えられない。
本人が出場を志願しても、所属先の球団からドクターストップが入る」と驚きを隠せなかった。
遊撃の守備でケガの影響を感じさせない抜群の安定感を見え競ると、
7回1死一、三塁の好機で148キロの直球を振り抜き、9点目の右前適時打。
一塁ベンチは大盛り上がりだった。
栗山英樹監督は試合後のインタビューで、
「本当に皆さんありがとうございました。なかなか多くの野球ファンの皆さんが球場に来られない時期が続きましたけど、野球が戻ってきたなという感じがします」とスタンドを見つめた。
そして、「長い間戦っているとまあまあ…」と話したところで、大谷がイタリアのベンチ前に出向き、
エンゼルスでチームメートのダビッド・フレッチャーと写真撮影をして球場がどよめいたために、インタビューが一時中断。
栗山監督は「すみません、しゃべらせて頂きます」と苦笑いを浮かべて仕切り直すと、「最終的に点差が離れましたけど、日本が誇る素晴らしい投手が投げても、(イタリア打線が)バットの芯に当たる。
試合展開がどうなるか分からなかったので、たまたま勝たせてもらいました」とイタリアの健闘をたたえた。
そして、「試合前から久しぶりに選手に少し話をする中で、これだけの緊張感をなかなか感じないぐらい、選手は緊張していました。
多くのファンの皆さんに、日本の素晴らしい野球を見せるんだという緊張感は僕も凄く感じましたが、
試合の形で出たので本当に良かったです」と安堵の表情を浮かべ、
「日本の誇る投手全員を突っ込んで…人前でそういう話はしませんが、今日に関してはファンの皆さんにも届いていると思いますが、
翔平があれだけ1球1球声を出しながら、何とかしたいなというのは初回から感じられていたので、
その思いは僕を含めて全員に伝わってました」と大谷を称賛した。
野球の本場・米国で開催される決勝ラウンドに向け、言葉に力が入る。
「最初にチームを作った時に言ったように、僕がということではなくて、日本の大先輩方、
野球を作ってくださった方の思いを持ちながら戦いたいという風に思いましたが、野球が発展するためにはアメリカに行って、
アメリカでやっている選手たちに勝たなければ前に進まないとずっと思っていたので、ぜひ勝ち切れるるように頑張ります」と力強く誓った。
あと2勝。全員野球で頂点を目指す。
2023 ワールド・ベースボール・クラシック - 安東伸昭ブログ (goo.ne.jp)