怖いなって思います。震度5程度で壊れることじゃありません。安い仕事で数を稼いで、事務所を運営していく厳しさを思うと、姉歯建築士がしてしまったことが他人事だとは思えないからです。
バブルが崩壊しての十数年、コストダウンの波は、我々税理士業界へも波及しています。率直に言って、10年前に比べて仕事の単価が2~3割下がっています。そうなると、仕事量を増やして、収入を維持する方向に向かわざる得ない。
今までは余裕をもって仕事が出来ていましたから、仕事を慎重に吟味し、検算検証を重ねて確実にこなせていたことが、現在では難しくなりつつある。やはりコストダウンを重ねると、どうしたって、どこかで仕事の質を落とさざる得ない。
仕事をしていく上で、どうしたって守らねばならない最後の一線は必ずあります。でも・・・追い詰められて、追い込まれてしまったら、その最後の一線を目をつぶって「えいや!」と踏み越えてしまうのかもしれません。そうなったら後は、毒食わば皿までの心境でしょう。
この事件が発覚した直後の、姉歯建築士のまるで他人事のような褪めた表情を見ていると、最後の一線を越えてしまった者の虚脱感のようなものを感じて仕方ありません。自分がそのような立場に追い込まれたら・・・そう思うと、やはり怖いなって思います。