日本の山で、危険な野生動物はなにかと問われたら、大概の人は熊を挙げると思う。
概ね間違いではないが、実のところ熊のほうが人間を恐れている。いきなり出くわしてパニックになった熊に襲われる場合がほとんどで、熊のほうから積極的に人間を襲うことは少ない。
ただし、子連れの時と、食料を守るときは別だ。十数年前、北海道日高山系でヒグマに荷物を取られたハイカーが、後日偶然に地中に埋めてあった自分の荷物を見つけてしまい、掘り返して荷物を取り返したことがあった。自分の獲物を奪われたヒグマは激怒して、そのハイカーをなぶり殺しにしたことがある。やはりヒグマは怖いと思う。
しかし、これは例外的事件で、多くの場合、熊は人間の存在を知ると身を隠し、逃げ出す。野生動物は大半がそうだ。
ところが人間を恐れない奴らがいる。その代表が野犬と日本猿だ。捨て犬が野犬化した犬たちは厄介だ。なにせ人間をよく知り、なおかつ憎んでいる。まあ、知っているが故に、積極的に人間に近づこうとはしない。ただしテリトリーに入り込むと、凄まじく攻撃的になる。大概が保健所や猟友会が内密に処理しているようだ。
更に厄介なのが、ニホンザルたちだ。頭が良く、人間を恐れない。日光近辺では、ニホンザルが街をうろつき、店先の食料やおみやげを奪う事件が後を絶たない。民家の台所に入り込んで、食料を奪っていくケースもあると聞く。なにせ連中は野犬と異なり、野生動物保護の対象だけに簡単に駆除することも出来ず、地元では苦労しているそうだ。
日光のいろは坂は、紅葉見物の名所だが、ここにもニホンザルが跋扈している。餌をやるドライバーも悪いが、餌を当然のように奪い去るニホンザルは危険ですらある。実際、ニホンザルは腕の力が強く、大人でも軽々しくは手を出せない。引っ掻くのも怖いが、噛み付く力も相当に強く危険な野生動物であるのが実態だ。
大学生の頃、千葉の清澄山を登った時のことだ。里山ではあるが、案外奥深い山で、楽しいハイキングだった。そのはずだった。まさかニホンザルに取り囲まれるとは思わなかった。
のどかな風景を肴に、のんびりお茶を沸かして休憩している時のことだ。風もないのに周囲の木々がざわめいている。気が付くと、木々の上にはニホンザルの群れがたむろしていた。次の瞬間、ザックの上に置いてあったクッキーの箱が奪い去られた。味を占めた猿たちは、虎視眈々と次の獲物を狙っているのが感じ取れる。やばい・・・
キーという鳴き声がしたと思うと、やれ不思議。猿たちの姿が消えた。ふと気が付くと、我々の足元に見知らぬ犬がいた。茶色の和犬で、舌を出してハアハアと喘いでいる。走ってきたらしい。首輪をしているが、飼い主の姿はない。カップに水をいれてやると、美味そうに飲んだ。ついでにビスケットもやると、ガツガツ食べる。どうやら、彼が我々を救ってくれたようだ。
勝手に「太郎」と名づけて、彼と一緒に山を降りた。時折立ち止まり、木々を見渡し鼻を鳴らす。我々には見えないが、まだサルが付いて来ていたようだ。人里まで降りると、太郎は家並みの中へ消えていった。きっと我が家に帰ったのだろう。
送り狼? 犬だよな太郎は。
それにしても、犬猿の仲とはよく言ったものです。犬に救われて、無事下山できたのだから、太郎には感謝感謝です。
犬を飼わなくなって、早30年。いつかしら犬と一緒に暮らしたいものです。できるなら鎖につながないで、庭に放し飼いにしたい。別にカヌーに乗らなくてもいいから、犬が足元にいる暮らしに憧れています。
概ね間違いではないが、実のところ熊のほうが人間を恐れている。いきなり出くわしてパニックになった熊に襲われる場合がほとんどで、熊のほうから積極的に人間を襲うことは少ない。
ただし、子連れの時と、食料を守るときは別だ。十数年前、北海道日高山系でヒグマに荷物を取られたハイカーが、後日偶然に地中に埋めてあった自分の荷物を見つけてしまい、掘り返して荷物を取り返したことがあった。自分の獲物を奪われたヒグマは激怒して、そのハイカーをなぶり殺しにしたことがある。やはりヒグマは怖いと思う。
しかし、これは例外的事件で、多くの場合、熊は人間の存在を知ると身を隠し、逃げ出す。野生動物は大半がそうだ。
ところが人間を恐れない奴らがいる。その代表が野犬と日本猿だ。捨て犬が野犬化した犬たちは厄介だ。なにせ人間をよく知り、なおかつ憎んでいる。まあ、知っているが故に、積極的に人間に近づこうとはしない。ただしテリトリーに入り込むと、凄まじく攻撃的になる。大概が保健所や猟友会が内密に処理しているようだ。
更に厄介なのが、ニホンザルたちだ。頭が良く、人間を恐れない。日光近辺では、ニホンザルが街をうろつき、店先の食料やおみやげを奪う事件が後を絶たない。民家の台所に入り込んで、食料を奪っていくケースもあると聞く。なにせ連中は野犬と異なり、野生動物保護の対象だけに簡単に駆除することも出来ず、地元では苦労しているそうだ。
日光のいろは坂は、紅葉見物の名所だが、ここにもニホンザルが跋扈している。餌をやるドライバーも悪いが、餌を当然のように奪い去るニホンザルは危険ですらある。実際、ニホンザルは腕の力が強く、大人でも軽々しくは手を出せない。引っ掻くのも怖いが、噛み付く力も相当に強く危険な野生動物であるのが実態だ。
大学生の頃、千葉の清澄山を登った時のことだ。里山ではあるが、案外奥深い山で、楽しいハイキングだった。そのはずだった。まさかニホンザルに取り囲まれるとは思わなかった。
のどかな風景を肴に、のんびりお茶を沸かして休憩している時のことだ。風もないのに周囲の木々がざわめいている。気が付くと、木々の上にはニホンザルの群れがたむろしていた。次の瞬間、ザックの上に置いてあったクッキーの箱が奪い去られた。味を占めた猿たちは、虎視眈々と次の獲物を狙っているのが感じ取れる。やばい・・・
キーという鳴き声がしたと思うと、やれ不思議。猿たちの姿が消えた。ふと気が付くと、我々の足元に見知らぬ犬がいた。茶色の和犬で、舌を出してハアハアと喘いでいる。走ってきたらしい。首輪をしているが、飼い主の姿はない。カップに水をいれてやると、美味そうに飲んだ。ついでにビスケットもやると、ガツガツ食べる。どうやら、彼が我々を救ってくれたようだ。
勝手に「太郎」と名づけて、彼と一緒に山を降りた。時折立ち止まり、木々を見渡し鼻を鳴らす。我々には見えないが、まだサルが付いて来ていたようだ。人里まで降りると、太郎は家並みの中へ消えていった。きっと我が家に帰ったのだろう。
送り狼? 犬だよな太郎は。
それにしても、犬猿の仲とはよく言ったものです。犬に救われて、無事下山できたのだから、太郎には感謝感謝です。
犬を飼わなくなって、早30年。いつかしら犬と一緒に暮らしたいものです。できるなら鎖につながないで、庭に放し飼いにしたい。別にカヌーに乗らなくてもいいから、犬が足元にいる暮らしに憧れています。