プロレスの楽しみの一つに、覆面レスラーの存在がある。
最近では「食いしん坊仮面」とか「えべつさん」とかのコミカルな覆面レスラー(コスプレ・レスラーと言うべきか?)もあり、ちょっと見てみたい気がする。
ただ、実のところ覆面レスラーには、あまり強いレスラーは少なかった。正味強かったと記憶しているのは、四の字固めのデストロイヤーとタイガーマスク(佐山)のライバルだったブラックタイガー、そしてミスターX(正体はビル・ミラー)くらいだ。
プロレスの楽しみは、別に強さだけではないから、構わないといえば構わない。ミル・マスカラスのようなプロレスがあってもいいと思うが、あたしゃ好きじゃなかった。かっこつけがひど過ぎる。
興味深かったのが、ミスターXことビル・ミラーだ。アメリカの大学フット・ボールのスター選手で、プロ・リーグでも活躍したが、膝の故障からプロレス入り。190を超す長身と、鍛え上げた頑丈そうな身体の上に、ふてぶてしくも逞しい顔つき。なにより金髪の白人であり、アメリカンフットボールのスター選手であったから、当然に善玉レスラーとしてアメリカでは絶大な人気を誇った。
ただ、決して器用なレスラーではなかった。アメフト仕込みのタックルで、あの鉄人ルー・テーズを負傷させたりしたこともあり、あまり芳しい話の少ないレスラーだった。日本にも来たが、正直あまり覚えていない。
ところが、この男マスクを被ったら人が変わった。多分、性格的に悪役のほうが似合っていたのだろう。善玉役のレスラーをいたぶり、反則の限りを尽くして暴れまくるミスターXは迫力満点の覆面レスラーだった。若き日の馬場や猪木をいたぶり、なぶる暴れぶりは、まさに悪役王。当然に観客はヒートアップして、試合は大盛り上がり。当時小学生の私は、椅子の上に立ち上がり、声を張り上げ、馬場や猪木を応援したものだった。
ただ、その悪役ぶりは、白人の有色人種に対する蔑みが根っ子にあるかのような暴れぶりだった。折り畳み椅子で殴りつけて、リングの外に唐黷アむ馬場を見下ろす視線には、子供心にも何か冷たいものを感じ取れて、少々不愉快な気持ちにさせられた。まあ、だからこそ馬場の逆襲に興奮したのも事実だった。
推測でしかないが、痛めつけられた馬場や猪木も同様の不快感を持っていたのかもしれない。力道山が作った日本プロレス崩壊後、馬場の全日本にも猪木の新日本にも、ミスターXは招かれることはなかったと思う(多分・・・)
ビル・ミラーはその後、プロモーターに転進し、さらに実業界に打って出たと聞いた。プロレスの世界からは身を引いたようだ。
米軍基地のそばで育ち、白人の人種優越意識を肌身に感じていた私には、えらく記憶に残るプロレスラーでした。
最近では「食いしん坊仮面」とか「えべつさん」とかのコミカルな覆面レスラー(コスプレ・レスラーと言うべきか?)もあり、ちょっと見てみたい気がする。
ただ、実のところ覆面レスラーには、あまり強いレスラーは少なかった。正味強かったと記憶しているのは、四の字固めのデストロイヤーとタイガーマスク(佐山)のライバルだったブラックタイガー、そしてミスターX(正体はビル・ミラー)くらいだ。
プロレスの楽しみは、別に強さだけではないから、構わないといえば構わない。ミル・マスカラスのようなプロレスがあってもいいと思うが、あたしゃ好きじゃなかった。かっこつけがひど過ぎる。
興味深かったのが、ミスターXことビル・ミラーだ。アメリカの大学フット・ボールのスター選手で、プロ・リーグでも活躍したが、膝の故障からプロレス入り。190を超す長身と、鍛え上げた頑丈そうな身体の上に、ふてぶてしくも逞しい顔つき。なにより金髪の白人であり、アメリカンフットボールのスター選手であったから、当然に善玉レスラーとしてアメリカでは絶大な人気を誇った。
ただ、決して器用なレスラーではなかった。アメフト仕込みのタックルで、あの鉄人ルー・テーズを負傷させたりしたこともあり、あまり芳しい話の少ないレスラーだった。日本にも来たが、正直あまり覚えていない。
ところが、この男マスクを被ったら人が変わった。多分、性格的に悪役のほうが似合っていたのだろう。善玉役のレスラーをいたぶり、反則の限りを尽くして暴れまくるミスターXは迫力満点の覆面レスラーだった。若き日の馬場や猪木をいたぶり、なぶる暴れぶりは、まさに悪役王。当然に観客はヒートアップして、試合は大盛り上がり。当時小学生の私は、椅子の上に立ち上がり、声を張り上げ、馬場や猪木を応援したものだった。
ただ、その悪役ぶりは、白人の有色人種に対する蔑みが根っ子にあるかのような暴れぶりだった。折り畳み椅子で殴りつけて、リングの外に唐黷アむ馬場を見下ろす視線には、子供心にも何か冷たいものを感じ取れて、少々不愉快な気持ちにさせられた。まあ、だからこそ馬場の逆襲に興奮したのも事実だった。
推測でしかないが、痛めつけられた馬場や猪木も同様の不快感を持っていたのかもしれない。力道山が作った日本プロレス崩壊後、馬場の全日本にも猪木の新日本にも、ミスターXは招かれることはなかったと思う(多分・・・)
ビル・ミラーはその後、プロモーターに転進し、さらに実業界に打って出たと聞いた。プロレスの世界からは身を引いたようだ。
米軍基地のそばで育ち、白人の人種優越意識を肌身に感じていた私には、えらく記憶に残るプロレスラーでした。