あまりに不遇にして不運。それが8マン。
間違いなく人気作品であった。丸みを帯びた絵柄が主流であった当時の漫画界にあって、桑田次郎(現、二郎)のシャープな描写は際立って印象的であった。原作は「ウルフガイ」「幻魔大戦」の平井和正である。
まだ新人のSF作家であった平井は、小説家としては稼ぎが少なく、豊田有恒(SF作家)や福島正実(SFマガジン編集長)らの紹介もあって始めた漫画の原作に情熱を燃やしていた。面白くない訳がない。
かつて手塚治虫の代筆を務めたほどの桑田の画力とあいまって、週刊少年マガジンでの大人気、それはアニメ化されてTVで放送されると爆発的な人気を博した。
しかし、最終回を目前にして放送は中断された。原因は桑田の銃刀法違反である。痴話げんかのもつれから、相手方から銃器を隠し持っていることを通報されての逮捕であり、子供向け漫画の作者としては許されぬ事件であった。
ところで、TVアニメ「8マン」の主題歌も、けっこうヒットして子供たちから愛唱された。歌手は克美しげるであったが、その克美自身が愛人を射殺するという事件を起こし、この主題歌も放送されなくなる始末。
おまけに原作者の平井和正は、学研と原稿改ざんを巡る争いが原因で、大手出版社から干される始末。あれだけ大ヒットした人気アニメ、人気漫画であるにも関わらず、大人の事情で尻つぼみになってしまった不遇な作品である。
しかし、優れた作品であったのは間違いなく、決して忘れ去られることはなかった。ファンは作品を見捨てはしなかった。それなのにだ、またしても馬鹿をやった。
実は1990年代に宍戸開主演で実写映画化されたのだが、これがアニメの実写化史上屈指の駄作だった。映画の失敗で出版社も倒産し、8マンは漫画界屈指の不遇不運な作品として名を留めてしまっている。
漫画としては「サイボーグ009」や「ロボット刑事」の先駆者的な作品であり、そのシャープな絵柄とあいまって人気作として不動の地位を築けるはずであった。それなのに、この惨状。
現在のCG技術、SFX技術を駆使することでリメイクすれば、まだまだ十分ヒットする可能性はあると思えるだけに、実に残念な作品でした。