ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

猟銃免許取消事件のその後

2022-01-18 11:11:00 | 社会・政治・一般

バカらしい事件には、更に馬鹿らしい裏事情があった。

それが北海道での猟銃免許取り消し事件である。北海道の地方都市でヒグマが街中に出没したため、警察の依頼を受けて地元猟友会の会長がヒグマを射殺した。その場には警察官も立ち会っていて、無事解決したはずだった。

ところが北海道の公安委員会が、この猟友会の会長の猟銃保持免許を取り消した。なんでも会長の発射した猟銃の弾丸が跳ねて民間施設に損害を与えたからだそうだ。

これに怒った会長が訴訟を起こした。同時に警察にヒグマ射殺の依頼を受けても、断わるようになった。もちろん他の猟友会の会員も同様である。おかげで、ヒグマさんは、大手を振って街中を歩きまわり、ゴミは漁るは、番犬は食い殺すはとやり放題である。

以前にも書いたが、発射された銃弾がなにかにあたり別方向へ飛ぶことを跳弾と呼ぶ。アメリカのFBI所属の研究所によると、跳弾をコントロールすることは不可能であり、事故が起きた場合は不可避なものとして扱うよう指導しているとのこと。

銃器に疎い公安委員会が、そのあたり知ってたか知らないのかは不明だが、現場の実情を無視した免許取り消しには、官僚的な事なかれ主義の愚かな結果だと思っていた。

幸いにして裁判所はそこまでバカではなかったようで、年末に猟銃保持免許取り消しの決定を破棄する判決を出している。

それはさておき、ようやく裏事情が見えてきた。実は事件が起きた当時、警官に同行してヒグマを駆除するために駆り出された猟友会の人間は、会長の他にもう一人いた。会長がヒグマを射殺した時、一発の弾丸が跳弾となってもう一人の猟友会の方の私物を壊したらしい。

その弁償を求めたが、会長も警察も拒否。別に狙ったのではなく、跳弾なのだから不可抗力なのが実情だ。でも納得できなかったこの猟友会の方は、公安委員会にねじ込み、トラブルを嫌がった警察官僚が免許取り消しという安易な解決をしたことがあったようなのだ。

実に馬鹿らしい話だが、私が呆れるのはこの事件を報じたマスコミ様である。どうやら碌に取材もせず、記者クラブでの発表を鵜呑みにした間抜けな記事を書いていたらしい。

幸か不幸かネット社会であるため、事件の背景にあった猟友会の会員同士のもめ事が表に出てきてしまった。同時に公安委員会及び警察の事件発表のいい加減さも露呈したわけだ。

更に付け加えるならば、現場に居合わせた会長ともう一人の猟友会会員と警察の間で話し合えば、もっと速やかに解決出来た問題ではないのか。跳弾自体は制御不可であり、その意味で会長に責任はない。

しかし、それが会長の撃った銃弾である以上、なんらかの謝罪や弁済があってもおかしくない。同時にヒグマ射殺を依頼した警察にも責任はあり、一部の補償をしてもおかしくないと思う。

要するに現場のコミュニケーション不足。それを知ってか知らずか、適当な処置を下した公安委員会ともども社会人としての器量不足に思えてなりません。

このような、いささか複雑なトラブルの場合、地元の政治家なり顔役が介在して温和に片づけるのが従来の日本社会でした。私は話し合い万能主義ではありませんが、話し合いの重要さは認識しているつもりです。

日本社会が次第に陳腐化し、劣化しつつある証左に思えて仕方ありません。多分、似たような馬鹿げたトラブル、日本中にあるんではないでしょうかね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする