ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

プロレスってさ カート・ヘニング

2022-01-19 13:13:00 | スポーツ
アメリカのプロレス界には「日本帰りは出世する」というジンクスがあった。

その一例がカート・ヘニングだと思う。最初は新日プロのMSGシリーズだった。まだ若かった彼は碌な戦績も残せず、せっかくのMSGタッグ・シリーズにおいても白星配給役に過ぎなかった。

ただ、ここで日頃接することのない大物レスラーたちと巡業を通じて知り合ったことが、後の出世につながっているらしい。もともとレスリングの技術は高かった。ただ、それをどうアピールするかが分かっていなかっただけ。

日本で活躍する大物レスラーたちは、本国アメリカとは異なるスタイルで試合をする。日本は技と技、力と力といった格闘スタイルの試合を好む。だから、基礎的な実力がないと、それに対応できない。

高いレスリング能力を持ちながらも、それを活かせずにいたカート・ヘニングはここでヒントを得たらしい。その後はアメリカで大活躍。そのギミックはミスターパーフェクト。

野球をやればホームラン、バスケならば軽々とダンク、ゴルフならばあっさりとホールインワン。そんな驚きの映像をCMにして売り出したら大成功となり、アメリカ屈指の人気レスラーとなる。実際、その運動能力は高かった。

自分の売り出し方を覚え、なんでもできる気取り屋のイメージでリングに上がったカートだが、そのプロレスはおそろしく地味なもの。派手な投げ技や大技はほとんど使わない。

その代わりに地味ながら筋金入りの本格的なレスリングのテクニックで相手を追い詰め、最後はパーフェクト・スープレックスで決める。そのせいか、善玉よりも悪役のほうが似合っていた。

しかし、そのレスリングは本物であり、同業者であるプロレスラーたちからお手本とされ、練習などを見学にくるほどであった。あまりの人気で、日本にはあまり来ていないが、全日本でジャンボ鶴田とやった試合は、まさにプロレスの教本といってよい試合だ。

ただ、そのプロレスの完璧ぶりほど人格は磨かれていなかったらしく、最後は薬物での事故死である。試合中に痛めた背中の怪我のせいで、いつのまにやら薬物依存となっていたらしく、そのせいで亡くなっている。

アマレス出身のプロレスラーとしては成功者の部類に入る。また前述したとおり、そのレスリングの技術は同業のプロレスラーからも敬意を払われるほどの代物であった。

反面、人格面ではあまり良い評判は聞いていない。本人は手加減したつもりだったのだろうが、相手を痛めつけるテクニックは、浮黷轤黷驤ネ上に嫌われていたのも事実だ。

クリス・ベノアとの試合をユーチューブで視ていて気が付いたのだけど、ヘニングの投げ技、エグいわァ。プロレスのリングでは、見た目派手さを演出するため、投げ技も大きく回転させて(その分、スピードは落ちる)相手を背中から落とす(受け身がとりやすい)のが通例。ところがヘニングは小さく、鋭く回転させて首元近くから落としている。こりゃ、受け身が難しい。

クリス・ベノアはわざわざ日本まで行って新日本で練習生として基礎を鍛えぬいているから良いけど、アメフトやボクシング、ボディビル上がりの見映えバッチリのプロレスラーには、ヘニングの技を受けるのはキツイと思う。

そのせいだと思うが、背中を痛めてからは、そこを狙われることが多かったようだ。挙句痛みに耐えかねての薬物依存ではないかと思う。もっと相手を思いやれるプロレスが出来たのならば、今少し長生きできたのではないか。まァ私の邪推かもしれませんけど、その早過ぎる死は残念に思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする