代償は重かった。
私がこの30年、苦労しているのは鈍い知能でもなく、衰退する一方の体力でもない。免疫機能の低下、その一言に尽きる。もちろん心臓は問題ばかりではあるが、これは子供の頃から云われていたことで、ある程度覚悟はしていた。実際、私は心不全で死ぬと思い込んでいたぐらいだ。
しかし20代の時に罹患した難病の治療に多用したステロイド剤の副作用には、ほとほと困っている。ステロイド剤は「天使の秘薬、悪魔の媚薬」の呼び名があるように劇的な効能を持つ一方、その副作用もかなり重い。
その薬を10年以上服用していたのだから、私もある程度覚悟はしていた。その副作用の一つに、脂肪肝がある。肝臓のまわりに脂肪が溜まって肝機能に負担を与えてしまう。肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるが、異常が生じても表に出にくい。いや、出てしまう頃には重篤な結果となっている。
私の場合、肝臓に腫瘍が生じたことが発覚したのは10年以上前だ。これは予想の範囲内ではあり、内視鏡手術で対処している。ただ超音波検査ではあることが分かるが、内視鏡で見つけられなかったごく小さい腫瘍が一つ残っている。
そのため年に3回は造影剤を使ったCT検査を続けて監視している。今のところ大丈夫だと専門医から云われているが、検査を止めることは出来ない。一方、今回の39度超えの発熱を伴った風邪は、白血球の減少が大きく影響しているらしい。
大学病院の血液内科でも随分と調べてもらったが、やはり肝機能の低下が原因らしい。これも入り口はステロイド剤の副作用から生じたものなので、つくづく強い薬には強い副作用があるものだと痛感している。
まぁそれでも私は生きているし、同年代の友人が退職して第二の人生を歩みだしていることを思うと、そうそう我儘も言えまい。なにせ10年前よりも収入は倍増しているのだから、そう悪いものでもない。ただ体力が落ちてきているのに、倍の仕事量をこなさねばならないのがキツイ。
でも、このキツサがあるからこそ気力を振り絞れる訳で、ナマケモノの私には相応しいのかもしれない。でも70前には引退したいとの思いは本気ですけどね。