どうやら主役よりも人気があるという噂は本当らしい。
この作品、本編よりスピンアウトしたものなのだが、なにせ本編の主人公が怖い能力持ちの癖に、とても温厚で温和かつ大人しい性格なので、敢えてその真逆といって良い性格の奇術師ソリティアを外伝にて主役に持ってきたのではないかと邪推している。
正直言えば、私も主人公よりも好きかもしれません。でも身近にいたら絶対迷惑なタイプなのも確かでしょう。それでも目を離せないタイプだから始末が悪い。悪事はするが悪意はない、それでいて決して改心する気はない。
なにが目的で悪事をするのか分からない、意図不明の怪人、それが奇術師ソリティア。種も仕掛けもある手品だと広言しているが、その手品を何故やるのかの意図不明だから始末が悪い。しかし、対岸で見ている分には滑稽で面白い。
この本を読んで啓発を受けることはないし、人生に役立つような教訓もない。しかし無意味で無価値であっても、しかめっ面をほぐす程度の面白さはある。ライトノベルとはかくあるべしというべき手本かもしれない。
そういえば私が朝日ソノラマ文庫や早川SFのスペースオペラを読んでいる時は、大概試験の前だったり、宿題提出期日の前夜だったりした。要は現実逃避なのだと思う。大人になると、そうそう現実逃避は出来ないけど、それでも癒しは欲しい。
そんな時に無意識に手を伸ばして読みだしてしまうのがライトノベル。進歩ないね、私は。