タイトル、なんとかしろよ。
少女漫画家としては目が出なかった塀内夏子は、講談社の月刊少年マガジンに拾われて、ここで少年漫画の世界で再出発を図った。
何点か短編を描いているが、ここで表題の漫画に成功して、やがて週刊少年マガジンにおいてサッカー漫画を描いて成功を収めることとなる。
もっとも当時は女性であることを隠すため、塀内真人のペンネームを使用していた。当時、私は塀内が女性であることに、まったく気がつかなかった。
女性であることを明かしたのは、人気が定着して数年たってからだが、ほとんど問題にならなかった。塀内女史自ら拍子抜けしたと後書きで述べていたが、作家が女性であろうとなかろうと作品が面白ければ問題なかった。
ただ、興味深いことに女性人気はあまり高くないようだ。少年漫画を読む女性読者は少なくないが、塀内女史の作品が人気作として上位にきた話は聞いたことがない。むしろ人気の大半は男性読者であったと思う。
とりわけ面白いのは、作品中のヒロインにあまり人気が出ないことだろう。むしろ敵役にせよ、脇役にせよ男性キャラクターに圧涛Iに人気が出る。このあたりが、少女漫画家として芽が出なかった理由かもしれない。
しかし、少年たちを主人公にした漫画には、かなりの人気を博したのも事実。長編が多い作家なのだが、全3巻で完結した表題の作品などは、ある意味塀内夏子の漫画の魅力が凝縮されている気がする。
中学時代、その天才的なプレーを絶賛された少年が怪我で挫折して、バレーボールを諦めた。しかし、名門でもない普通の高校で、嫌々誘われたバレー部で再びその才能を輝かせる。そんなありきたりのストーリーなのだが、脇役たちがいい味を出している。
名門チームのエリート選手から雑魚と吐き捨てられた悔しさと、平々凡々たるチームメイトたちの期待を受けて、再びコートに立った主人公は、もはやただの天才プレイヤーではない。挫折と屈辱を味わい、平凡な仲間たちの力さえ引き出す名選手へと変貌していく。
スポーツ漫画としては、ありきたりだし、平凡すぎる展開だといってもいい。それなのに目が離せない魅力がある。さして才能もなく、ただ単にバレーボールが好きなだけの平凡なチームメイトたちがよく描かれているからこそ、塀内女史の漫画は魅力がある。
必死になろうとして、必死であろうと憧れつつも、必死になれなかった高校時代を思い出すと、こんな漫画がひどく恋しくなる。そんな気持ちにさせてくれるからこそ、塀内女史の漫画は輝くのだろう。
でも、このタイトル何とかならないかね。ちょっと手に取るの恥ずかしいぞ。
kinkachoは塀内作品はサッカーもの以外が好きです。サッカーものは巻数が多すぎて最後までたどり着けない…
ご指摘通り、女性キャラに全然魅力を感じません。「イカロスの山」なんて、最低の不倫女という評しかできません。合コンで自分より下の女しか集めない女幹事と同じかなと思います。