学園紛争当時、とめてくれるなおっかさん、背中の銀杏がないている、の一文で一躍有名になったのが橋本治だ。
この本のタイトルも上手い。中身もよく確認せずに買ってしまったぐらいだ。だが、読んでみて驚いたのは、本を読むということに関して記述されているのは、全体の3%程度で、その大半は経済に関することであることだ。
その視点が興味深い。経済の専門家の視点でもなければ、社会あるいは政治的な視点でもない。強いて言えば、文学あるいは哲学的視点に立っての経済論なのだ。とりわけ産業革命以前の農業との対比が面白い。
ただ、青春時代をマルクス主義の風が吹き荒れる学園紛争世代だけに、どうしても反米傾向は否めないし、結果の平等を理想とする思想的偏向が行間から感じ取れてしまうのが難点。
それでも傾聴に値する意見があるのは私も認めざるを得ない。特に農業と工業を同じ土俵で論じる事への違和感には、私も大いに同意できる。また近代経済というか、市場経済が常に右肩上がりを前提としていることへの異論は、実に興味深いと思う。
私個人の考えでは、ヨーロッパで生まれた近代的思想への懐疑と、石油と電気という第二の産業革命への言及、そして現代の我らが直面する科学の停滞の三点を大いに重視しているので、素直に橋本氏の意見を首肯する訳にはいかない。
だから読んでいて結構反感をそそられる部分はあったのだが、共感できる部分もある。すれ違いの共感とでも評するのが一番適切に思う。いささか迂遠で分かりづらい部分はあるものの、読んでみるだけの価値はあると思います。
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