山椒小屋の道標
2月13日予定通りHALを連れて、法華道から入笠牧場へ上がる。天気は午前中は日が射すも、風は強く、時折不気味に咆哮した。上りだしの積雪は、スノーシューでくるぶし程度、しかし当然ながら登るにつれて積雪は増し、2時間ほども経過したか、「脛巾当て(はばきあて)」辺りからは、雪も深くなり登行の速度もガクンと落ちた。
この古道・法華道の伊那側には、幾つもの古い名前が残っている。下から、「万灯」、「龍立つ場」、「門祉屋敷跡」、「爺婆の岩」、「厩(うまや)の平」、「脛巾当て」、「山椒小屋」、「御所平」、「御所平峠」などだ。富士見側にも「池の十(いけのとう)」などやはり古い名前はあるが、伊那側は、このブログにも時々登場して頂いている芝平出身の北原厚氏、通称「北原のお師匠」が、古道の復活に努力され、それぞれの場所に名前とその由来を記した道しるべを、自費で立ててある。
今では最良のパートナーHAL
この古道を、冬歩く人はまずいない。しかしそれが不思議だ。昨今山の人気は高まっていると聞くが、それなりには知られているこの古道を歩こうとする人がいない。何故だろう。冬の山を知るには、持って来いのコースだが。
法華道は一本の尾根を行く。したがって、迷うこともなければ、樹林帯の尾根で雪崩の心配もない。ただ、山椒小屋を過ぎると尾根は消えて、広い傾斜の残る森の中に出る。この辺りからはあまり夏道を意識せず、傾斜や起伏を自分の好みで選びながら、上手に行けば古い林道らしきにでる。出発点から、早ければ3時間前後でここまでくる。この落葉松の森の雰囲気は、いつも後になって味わい深く、心に残る。
山椒小屋は「お助け小屋」とも呼ばれ、かつては旅人の難儀を救ったりしたことがあったのだろう。こんなところに小屋があって、一杯の熱い茶でも振る舞われたら、旅の疲れもさぞかし癒されたことだろう。お師匠の話によれば、近くにはクリンソウの群生もあるという。
その林道をしばらく進み、一度大きく左折すると、右手に”大岩”が見えてくる。さらにそこを過ぎて、もう一度右に折り返えす・・・。そうやって、ひたすら歩く。雪道を歩くということは、緊張を保ちつつ、思うように捗らない苛立ちと、疲労の中をじっと耐えて歩き続けることと言ってよい。
そういう歩行を続けていけば、2時間もしないうちに御所平峠に着く。お師匠が、二人の孫の力を借りて担ぎ上げた、一体の地蔵と石の道標が、雪の中に眠っている。左斜めに下っていけば小黒川林道、そして入笠牧場に到着する。ゲートを超えてすぐに、左手に山小屋「農協ハウス」が目に入る。
今にも崩れそう、大丈夫か
雪のモンスターは軽トラ
この度し難い雪の量。ただただ笑うしかない。(つづく)