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明けて22日、人の声で目を覚ますと、どうやらもう出発の準備が始まったようだった。早い。時計を見ると7時を少し回っていた。朝食の担当者は何時起きし、またみんなはいつそれを食べたのだろう。昨年は、リーダーのARKさんが前夜の酒で不覚をとったにもかかわらず、厳寒の深夜2時起きして、朝食の準備を始めたと聞いた。小柄な身体のどこにあんなエネルギーが潜んでいるのだろう。
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天気予報は雨。入笠山頂からヒルデェラ(大阿原)、テイ沢のコースを今年も計画している様子だったから、余計なこととは知りつつも、天気が悪化して途中で引き返す羽目になれば厄介なこと、また、もし途中で引き返すとしても前日のラッセルを利用できる逆回りの方がよくはないかと言ってみた。その結果、天気に期待が持てないことから留守番役1名を残して7時半、予定を変更してひとまずテイ沢に向け出発していった。
それからどのくらいが経過したのだろう。「只今」という声で出てみれば、”歌手”のSさんが戸口に立っていた。どうやらテイ沢は予想外の雪で第3の橋からSさんを含む何人かは引き返し、残りの本隊はしかしそれに飽き足らず、予定を変更して今度は高座岩に向かったと言う。そして昼近くだったろうか、本隊もやがて意気揚々として帰ってきた。
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雪山は今回が初めてという人もいた。そういう人は、入笠山であれどこであれ山頂に立ちたかっただろう。また実際、当初の予定を変えなければ入笠山とヒルデエラ(大阿原)へ行くぐらいは、天候も何とか保ったと思う。そう考えると責任を感じざるを得ず昼食後、希望者を裏の1804メートルの三角点まで案内することにした。晴れていれば素晴らしい眺めを堪能できるところだが、それはかなわなかった。雪原を吹きすさぶ風と、ダケカンバやミズナラの木々を襲う霧とが共演する、灰色の寒々とした風景が待っていただけだった。しかしそれも、普段なら目にすることのできない雪山の景色で、悪くはなかっただろう。
下に戻って、「まだ歩き足りない人がいるようなら、近くの森をもう少し案内してもいいけど」というと、「行きたい」と数人、元気な声が返ってきた。ならばと、とっておきの森を案内することにした。(つづく)
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時代遅れの山小屋「農協ハウス」の3月の営業内容につきましては、昨日2月25日のブログを参考にしてください。
ゴンドラで手軽に登って、踏み固められた雪道を歩いて山頂を往復するのも悪くはない。しかし、折角のスノーシューやワカンは、誰も歩いたことのない深い雪の森の中へと、あなたを誘ってはいないだろうか。ちょっぴり足を伸ばせばここには、大きな空と、中ア、北アを含む大パノラマが待っている。「時代遅れの山小屋」かも知れない。しかしこういう小屋だからこそ、山人の思いが伝わり、味わえる。もちろん、凍死させたりはしない(笑)。加えてここには、どこにも負けないここだけの美しい星空がある。実はまだ、そのことを知っている人は、あまりいない。そうそう、ようやく待ち遠しかった天体望遠鏡も、常設できそうだ。乞うご期待。