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ワレモコウはその季節を終え、ノコンギクも終わりつつある。昨日の午前7時の気温は8度、今朝は6時の段階で10度と、ぼつぼつ衣替えが必要になってきた。
霧が深い。囲いの背後の落葉松やシラカバの木は薄い墨絵のように見えているだけで、中に牛の姿はないようだ。少しづつマユミの実が赤く色づき始め、コナシは黄葉(こうよう)を待てずに散る葉も多い。
外に出てみたら、いないと思っていた牛たちが囲いの中にいた。北の隅に固まっていたため、見えなかったのだ。
あの牛たちもここにいるのは残すところ3日、4日目の27日金曜日には里へ下りていく。いつもなら下牧は大体10月に入ってからで、少し早いと思ったが、草の状態などを見ればそれも止むをえまい。それに、下ではいろいろな秋の行事、催し物の予定があるようだ。
この仕事を始めて何年かは、ロープに縛られトラックに乗せられて山を下っていく牛の姿が哀れに見えた。と同時に、当時は牛の数も多く、放牧期間も今よりか長かったから大きな安堵感も覚えた。今もそういう相反する思いがないとは言わないが、気持ちの切り替えには大分慣れた。
行きずりの花の宴さびしくもたふとしや
作家の思いとは違うかも知れないが、ふと、こんな言葉が浮かんだ。
牛のいなくなった牧場で何をするのかとよく聞かれる。することはある。牧柵の整備、電気牧柵の冬支度、作業道の整備、枝打ちなどのほか、鹿対策もあればここを訪れる人たちへの対応などが残っているし、撮影の予定も入っている。
預かった牛のいた時とは違い緊張感は薄れても、肉体労働はまだまだ続く。そしてその間に、深まりゆく秋を味わい、目に触れ、音で聞いた様々なことを少しでも多く記憶と体内に沁み込ませておきたい。
霧が晴れた。夜露に濡れた草や木々の葉が日の光を浴びて輝きだした。やわら日の中で短い秋の一日がきょうも始まる。
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本日はこの辺で。