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午前5時、夜が明けてきたのだろう。カラスの鳴き声に続いて、ヤマバトの声もする。カーテンの隙間からわずかに薄青色の空が見える。きょうも秋空の拡がるいい天気になりそうだ。
キノコ狩りの続報と言うほどのものではないが・・・、牛の確認を済ませ安堵して、一度は無視したキノコを探しに林の中を引き返した。何しろ、誘惑されたのだから捨て置けない。
もうそろそろだろうと思うも、たった小1時間前の場所に記憶はなかなか連れて行ってくれない。もどかしい思いをしながら歩いていると、別な場所で新たな誘惑を受けた、美形である。今度はもちろん無視などしない、素直に応じる。
釣り師の中には釣った魚を持ち帰って食べるわけではなく、放流するのに、それでも少しでも多く釣ろうとする。キノコ狩りも似たような心理が働くらしく、一人で食べるにはもういいだろうと思えても、それでも初物探しを続けて予定した森の中、林の中をとにかく歩き回る。
キノコよりか、それに費やす労力の方を惜しんでいたはずなのに、そうしないと気が済まなくなってしまった。
さて持ち帰ったキノコ、その食べ方、実はよく知らない。で、大いに迷ったが、湯がいて大根おろしで食べるには大根がなく、すき焼きにするにも、その材料がない。翌日だったら富士見に下る用事があったが、それを待つことができない。
ないない尽くしで冷蔵庫の中をのぞいたら、驚いたことにビールまでがすっかりなくなっていた。もうこうなれば、里へ下るしかない。
いろいろと仕入れて牧に戻り、すき焼きの支度を始めた。行った時間が閉店近くで、春菊とタケノコは入手できず、ダイコンと糸こんにゃくは他の料理の食材に気を取られ買うのを忘れた。
それでも入魂して用意し、しばらくするといい匂いがしてきた。まずまずだと、わりしたに使う日本酒をさらにたっぷりと加え醤油を足して、おもむろに味見をする。そしたらなんと、先刻の味がすっかり駄目になってしまっている。ひどく甘酸っぱい。
後で分かったが、酒だと思ったのは梅酒で、それを気前よくドブドブと入れてしまったのだ。
まったく「あはれ/秋風よ/情(こころ)あらば伝へてよ」だ。仕方なく食べる。うーん、舌が慣れてくると、少しづつ酸っぱさは和らいできたと、強いて思う。
いつもは絹豆腐だが、目当ての品がなく焼き豆腐にしたがこれは正解。ただし、キノコにはすき焼きの味が強すぎ、繊細な風味を損なったような気がしないでもない。次回は出汁を効かせた薄味の醤油仕立てに山芋などと一緒が良いかも。なお、肝心な肉の種類は、内緒。
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本日はこの辺で。