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(昨日から続く)
スノーシューズに関しては、前にも似たような経験をしていた。靴とシューズを固定するゴムのバンドが切れて、腰までの深い雪の中を泳ぐような思いをしたこともあって、そのためゴムのバンドはすべて強度のある6ミリの細引きに換えて万全を期したつもりでいた。まさか付け根までがあんなふうにあえなく切れるとは。
一応は用意してあった細引きで何とか凌ごうとしたが、10㍍も行かぬうちにまた外れてしまい、かくなる上はと右足はツボ足で行くことを覚悟した。
踏み跡が細く歩行に支障がある時はこうした手もあるが、ただし、登路がしっかりしている場合である。あの古い林道は数歩も歩けば右足は潜るし、左足のスノーシューズも菓子の最中のような雪に沈んでしまい、雪中行は俄然苦難を強いられることになった。
遅々として捗らない雪の道に昔のツボ足山行を思い出し耐え、御所平峠に着いたのは13時近かったと思う。出発が9時45分だったから、4時間以上もかけてしまったことになる。
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お師匠の担ぎ上げた地蔵尊に声をかけ、頭を下げ、写真も撮った。峠の少し手前で左足のスノーシューズも外れてしまっていたため、そこからは両足ともツボ足で歩くことを余儀なくされた。
峠から林道へ下り、南門から先は予想通り踏み跡のない雪を膝まで潜りながら小屋に到着した。
今回も例のドロドロのウイスキーと、凍結を免れたビールが労を労ってくれたが、不思議なもので、里にいれば遠い存在であったそこが、落ち着けば懐かしのわが家のようになる。気温は零下7度だった。
夜、星を見ようと外に出てみたが、2回とも月はないのに星の数は少なく、中点よりか西に傾きかけたオリオン座がいつになく精彩を欠いて見えていた。
翌日は7時半に目を覚ました。気温は零下17度、快晴。上に来て、やはり牧場を無視して帰るわけにはいかないと、前夜修理したスノーシューズを靴に縛り付け、強引に足をねじ込み、そして一夜泊まりのわが家にも等しい小屋を後にした。
今回の牧場行、いろいろと思うことが多かった。次回もう少し、そのあたりのことを。
本日はこの辺で。明日は沈黙します。