きょうも曇天、囲いの背後のコナシ、白樺、落葉松の混成林にも、権兵衛山を包んだ雲の切れ端がゆっくりと流れていく。静かだ。日の射さないせいか、周囲の渋めの秋の色が静けさをさらに深めている。
入笠牧場で18年という長きにわたり働き、最近の2年ほどはここを生活の場にもしている。だから、周辺のことはよく知っていると言ってもいいだろう。
それにもかかわらず、まだ行ったことのない場所が極めて身近な場所にあった。以前から気になっていたが、そのうちにはと思っているうちに行かずじまいで歳月が流れた。
その場所というのは富士見側にある「沢入」から「入笠湿原」に至る登山道のことである。
昨日(28日)、ふと、片道1時間かそこらの山道に過ぎない、往復すればいいだけのことだと思ったら、居ても立っても居られず、秋の午後も3時過ぎ、少々遅いと思ったが出掛けることにした。
こんなことを思い付いたのも焼き合わせのツタウルシの紅葉を見ようと出掛けた帰りのことで、それが期待はずれっだったせいでもある。まだ早過ぎたかも知れない。
歩き出しは、入笠山の登山口にある駐車場からにした。3時を過ぎていたと思っていたが、折り返しの沢入で時計を確認したら3時25分、駐車場へ戻ってきたのが1時間後の4時25分だったからそんなわけはない。と言って、かなり速足で下っていったから、下りに1時間はかかり過ぎの気がしないでもないが。
そんなことはさておき、この登山道は勾配もそれほど急ではなく、よく踏み固められていて、長年多くの人が通った道だったことが分かる。整備もひと昔前までは丹念に行われていたことが随所に認められ、想像していた以上のいい山道だった。
時間的なこともあってか、下りで夫婦らしき1組を追い越し、登りで下って来る1名の登山者に出会っただけで、谷川を流れる水音を聞きながら静かな気持ちの良い山歩きができた。
この山道から入笠山に登れば、これなら「登山」と呼んでもいいだろうと、そんなふうにも思ったりしたものだ。(9月29日記)
富士見町としては、今はひとりでもゴンドラに集客したいだろうから、ここであまり古い登山道の良さを強調したら有難迷惑だろう。しかしそれでもこの登山道を知っておいて、いつか歩いてみることをお勧めしたい。
きょうはもう少ししたら里へ下る。
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本日はこの辺で。