雨の降る音がする。もうすぐ午前4時になる。夏が終わり秋が来て、牛がいなくなったこのは頃、こんな時間に目が覚めることが多い。
昨日は予定通り電気牧柵の一部の冬支度を済ませ、そのあとは高座岩に通ずる北原新道の草刈りに行った。北原のお師匠の苦心の作であるこの山道は春、クマササが角ぶくころに一度刈っておいたが、案じていた通りあの時の苦労がすっかり元の木阿弥になってしまっていた。
ここの草刈りは山道が急なため、絶えず刈り払い機を抱えるようにして作業をしなければならず、それと比べたら法華道の草刈りなどは余程楽だと言える。それに、斜面を横切るようにクマササを刈っただけで、伐根などお師匠一人の手でできるわけもなく、傾斜している所が多く足場も良くない。
こういう仕事は根を詰めてやっては駄目で、いくら気が急いても、いやになる前に止めるのがコツだと思っている。昨日もそうした。恐らく、高座岩にたどり着くまでにはまだ幾日もかかるだろう。
ある人は、この山道を下ってから北原師のしたことを「正気の沙汰とは思えない」とまで言った。近年はそのような山道を、もっぱら不詳の弟子がブツクサ言いながら草刈りを続けているわけだが、そうしなければこの山道は消えてしまう。
テイ沢は人気も出て訪れる人が増えてきた一方、その後に林道をしばらく牧場へ向かって歩くと目に付く高座岩への案内板に誘われ、足を向ける人がどれほどいるだろうか。
単調な林道を歩くよりか、高座岩から御所平峠までの気持ちの良い古道を歩き、案内に従って再び林道に下る方をお勧めしたいが、登り口で先行き不安になり迷う人が多いかも知れない。
特に今の状態で、しかも雨でも降っていれば、二の足を踏むのは無理もないと言える。
1472年だったか、京の都では応仁の乱の騒乱が始まっていたはずだが、身延山の第11代法主日朝上人がこの高座岩を訪れ、そこで説法を行ったという。しかし、今となってはそこに至る上人のたどった道が残っておらず、ならば何としてもお師匠の手で道を開けねばならないと、一念発起したようなのだ。
2,3本も木を切ればかなり道は良くなると分かっていても、国有林とあってはそんなことをしたら大変なことになる。北原のお師匠も森林管理署に通い詰め、その挙句にようやくクマササを刈るだけの許可を得たのだというのだが、それだけでも大変なことだったらしい。
少しでも歩く人が絶えなければ道は消えない。歩きづらくも林道からは10分程度で高座岩に達っする。眺望も良いので是非とも訪れて、眼下に「仏の谷」を眺めつ、遠い昔しを偲んでほしい。
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本日はこの辺で。