「母の遺産―新聞小説」、読了。
“愚かなる宮の「ゆらぎ」すらもともに抱きしめ
頑ななる貫一の差し込むようなアイスなる熱情に切なくなりながら”
おもえば この時においては つまりは世代は違っていた。
遥けくも 遠い昔。
「母の遺産…」地点は 同世代、というのかピンポイント。どのページもダウンバーストのような何かが吹き下ろしてくる。円柱様のものにすっぽり囲まれたような。
「Sous le pont Mirabeau coule la Seine――ミラボー橋の下をセーヌ川は流れる」 153ページ
「Aujourd'hui, maman est morte」「今日、母が死んだ」 261ページ
「…大して呑めもしないくせに頼んだ
のは、カルヴァドスという度の強いフランスの林檎酒である。…」 302ページ
「 時は百十年以上前の、明治三十年。「讀賣新聞」で尾崎紅葉の『金色夜叉』が始まった。 」 374ページ
「…子供のころくり返し読ん
だ『小公女』のセーラのみじめな屋根裏部屋。…」 486ページ
折り込まれた 時代時代のことば。
お、カルヴァドス飲んだことがある。ダウンバースト言っておきながら そんなところに反応してしまった。
レマルクすごい、バーグマン美しい、シャルル・ボワイエかっこいい*、と見に行った 映画「凱旋門」。
映画に 小説から受けたものを感じるまでにいかなかったような記憶があるのだが 今 見返したら どうなのだろう。
その映画の中に出てくるお酒 カルヴァドス。
立ち寄ったデパートのレストランでランチを取ろうとメニューを眺めていたら あったのだった、カルヴァドス。
わあ ラビックとジョアンの カルヴァドス。お昼なのに 注文してしまったのであった。おいしかったのかなあ。
「母の遺産―新聞小説」に戻れば
愛憎、の 憎なる文章の築かれるところに どうしてか
ひた隠しにされた愛なるものを 感じずにはいられなかった。
《 アベ君が言ったの 「お前とは握手してやんねえよ」って 》
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ラビック(シャルル・ボワイエ)が レストランの中で 片手を軽く上げ ウェイターを呼ぶシーン。かっこいー、と覚えているのだが
合ってるのか?
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どちらも雪がふりつもり
こちらも雪がふりつもる。