雨。雨の音がしている。小雨のようだ。これくらいだと土深く湿ることはあるまい。霧雨に近い降り方である。11時。早くも目が覚めてしまった。小用を足す。これが老いだろう。眠りが浅く、ちょこちょこと目覚めてしまう。まあ、長年酷使してきた肉体である。衰退を来して不思議はなかろう。と、観念をするしかない。でも、鼻から息をしている。深々と息を吸う。生きていられることを有り難く思い、噛みしめる。
いつ何が起こるかわからない。ある日ある時、いきなり不測の事態を迎えるかもしれない。死んでしまうかも知れない。しかし、今此処ではそれを免れている。鼻から息をしている。それがしみじみと有り難くて、深々と息を吸う。腹の奥深くまでたっぷりと息を吸う。おいしい。