も、寝る。今日を終わりにする。いい一日だったわい。美味しい空気をいっぱいいっぱい吸ったわい。一日中いっぱいいっぱい吸ったわい。空気は宇宙おっかあのおっぱい。おいしいおいしい。おっぱい飲んだおいらは満腹。おっぱい飲んだおいらは元気いっぱいよ。
酒田さ行くだで、まめでろちゃ。流行風邪など引かねよに。最上川の船頭たちは愛する妻を置いて筏舟に乗った。愛する子らを残して小舟に揺られた。酒田は日本海に尽きた。一仕事をやり終えて陸路を戻って来た。長々と歩いて、長々と熱い思いを滾らせて、戻って来た。愛する妻と愛する子らのところに戻って来た。舟唄を歌って最上川を下り、舟唄を歌って、最上川の川土手を上って来た。
おれはこれから空気の空(くう)として過ごすことになる。大空の(そら)空として過ごすことになる。気儘なものよ。千年万年、自在なものよ。億年兆年するするするり。空の空とは安易なものよ。気安なものよ。
仏陀はこう悟った。
一日も一瞬よ。一月も一瞬よ。一年も一瞬よ。十年も一瞬よ。百年も一瞬よ。あっという間よ。一億年という石の棒を右隣に立てたら、一瞬よ。あっという間よ。
しかし、一秒という砂の棒を左隣に置いたら? ぬぬぬぬぬぬよ。延びるわ延びるわ。同じ時間が、野蒜のように伸びる。この世はマジックショー。どうにでも変化する。
一億年をこれから過ごす。過ごすことになる。空気の空(くう)として過ごすことになる。オレは大空の空(そら)として過ごすことになる。ままよ。気儘よ。
巧く行かなかったと思うことがある。損失を蒙ったと思う。でもでもでも、その同じ分だけ、何処かでいつか巧く行くはずである。差し引きは、だから、ゼロになっている。そう思う。A面で凸したら、B面では凹になっているし、C面で凹したら、D面で凸になっている。バランスがちゃんと取れているのだ。心配しないでもいい。幸と不幸もこうなっていて、幸ばかりということもなく、不幸ばかりということもない。地球の水の量、空気の量は、全体としていつも一定を保っているのである。
父が恋しい。会いたい。会いに来てくれるかもしれない。息子が会いたいと言っているのだから。立派な父だった。息子から見たら、なのだが。
父はもうしかし40年も前に他界している。極楽浄土ももうずっと奥地の奥地まで進んで行っているかもしれない。
息子の一声くらいで、舞い戻ったりするだろうか。しなくてもいい、とも思う。父は父の歩みをすべきかも知れない。などとも思う。ふふふ、だ。だったら、会えないじゃないか。
瞑想の中で会うことにする。瞑想をして、父の名を呼べば、一も二もなく現れると思う。息子に優しい父だったから。
でも、弟が兄より先に往生極楽してしまったから、いまは弟と仲良くして暮らしているだろう、きっと。だったら、それでいいのだ。
晩酌に芋🍠焼酎。一合、5対5のお湯割りにして飲んだ。旨かった。たらりと酔った。肴は筍。今年初物だった。道の駅で、茹でたものを少しだけ買って来た。高値がついている。牛肉で煮て貰った。三切れ頂いた。おいしかった。母が、初物を食うと75日長生きすると言っていた。ふふう、だ。小葱の酢味噌和えも格別だった。ご飯は遠慮した。
お風呂が沸いたので、一番風呂をした。温まった。湯の中で寝てしまうのではないかと心配したが、眠らずに済んだ。後は寝るのみだ。怠け者は起きていられない。わたしの父もそうだった。それを思い出した。父は酒がいっさいだめだった。のに、夕食を食べたらすぐに鼾を掻いていた。父が懐かしい。
しばしの間よ。しばしの間よ。しばしを生きてあれば、滞りなく終末するだろう。増も止み、減も止むだろう。悲も止み、喜も止むだろう。桜は咲いて散るだろう。しばしの間よ。しばしの間よ。
7
それでもいいか/それでもいい/それで十分に足りている/山中に辛夷の木が花を着けている/春をしている/谷川沿いには人家があるが/これを見ようとして山を登って来る者はいない/それでもいい/ひとりで咲いても辛夷は貴婦人/此の世の春に/美しい装いを楽しんで紅を引き/しばらくすれば紅を落とす/
8
王維は仏教詩人。そこに仏陀の世界を見ている。
5
毎日少しずつ読み進めて読み返して、王維の詩を楽しんでいる。今日の詩はまたまた絵画だ。山水画だ。詩とは何か。この疑問を王維にぶつける。
6
辛夷は木に開いた芙蓉の花よ、美しい貴婦人よ、山中に紅を引いて山に見てもらうのみ。谷の水が流れているが人家には人が消えている。それでも貴婦人。華麗に咲いてそして華麗に落ちて行った。