私にとってのプラハはヴァーツラフ広場だ。チェコ人の苦難と誇りの証人たるこの広場は私には故郷のごとく夢に見る地だった。夢が実現し、佇む私の目前の風景は限りなく安らぎのある美しさ。地下鉄ムーステク駅の辺りから国立博物館を眺めるとなんと美しい通りであろう。正面に聳え立つ博物館は私にはそこから階段が始まる天国への入り口に見える。金色の丸屋根やその下に透明感のある水色のガラス窓が無数に並び、幅広い建物はこの大通りの両端に跨る。こんなに外観の美しい博物館は見たことがない。通りの左右には近代的ビルが壁をなし、その前には大木の行列が緑の縁取り。中央分離帯には彩り豊かな花壇が続く。人々はこの広場をゆったり楽しみながら歩く。だがヤン青年が焼身自殺した場所、聖ヴァーツラフ騎馬像の前に来ると多くの人が献花する。私も彼の勇気を讃えて献花した。
旧市街広場には2つの尖塔が目立つティーン教会や宗教改革の先駆者で異端として火炙りの刑にあったヤン・フスの像、旧市庁舎と天文時計など見所が多い。十二使徒が窓に姿を現すからくり天文時計は15世紀に作られたというが楽しい。オープンカーの客引きに興がのり、プラハの街をゆっくりと流して豪華気分を味わい、夜は本場の交響曲を楽しんだ。
中欧きっての温泉、カールロヴィ・ヴァリは湧出量はチェコ一番、温度は43~73度、16世紀に飲用が始まり18世紀末に近代医学と合体した飲用療法で有名だ。12の原泉があり、医師の処方で指定された温泉の湯を飲む。有名な音楽家、文豪、思想家が療養に訪れただけあり、17世紀の町並みのような郷愁をそそる温泉街だった。ピルスナー・ビール発祥の地、ピルセンへ行ったことは言うまでもない。このビールが世界に広まり、バドワイザーや富士高原なんとかビールが生まれたことは皆さん先刻ご承知だ。ピルスナー・ビール発祥記念の樽のあるレストランでランチをし、美味しくて「地球の歩き方」を置き忘れてきたのだが…ちゃんとレジのカウンターに飾ってあった。(彩の渦輪)
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