かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

誰のための会社再生だったか

2007-05-07 | 事例
憎らしいほどの天気です。
会葬者は200人近く居るでしょうか。葬儀は厳粛に進んでいます。

故人と知り合ったのは4年ほど前です。山手線の主要駅の直ぐ近く、祖先から受け継いだ土地にホテルを経営して居ます。
建築・設備のための融資が返済できず、第2担保ではありますが、ホテルの担保ごと、大手サービサーに債権譲渡されていました。
第一担保は大手銀行です。

85歳の故人は、経営が左前になると、今までホテルには無関係の3男を社長に迎え自分は会長になって居ます。サービサーに移る少し前です。
今まで借入保証は故人だけでしたがこの時に3男も保証人になりました。
後の子供はそれぞれ自分の事業をして居ります。
身内といえば、新社長の従兄弟が経理を任されています。

この従兄弟の経理と3ヶ月ほど先の実績予想は、実に正確なものでした。
後日どの債権者も舌を巻いています。

大手サービサーに譲渡されたと言っても、駅の近くの1等地、銀行とサービサー両方で、毎月金利とも1000万を返済して居ります。
それでも完済は30年掛かり、立派な不良債権らしいです。

大手サービサーの回収交渉は強烈でした。
ホテルはじめ、全ての不動産を競売すると頑張っています。
「競売してもホテルは無剰余で、必ず競売は取下げになります。無担保の不動産は必ず取られます。今から工作は遅すぎます。ですからサービサーは放っておいて、銀行に競売をされないようにしましょう。」と私です。
しかし、何よりホテルの存続を思っている社長と会長は怖がって承知しません。

しかしサービサーの狙いは資産家と言われる会長・社長の個人財産を狙っていたみたいです。

サービサーが強気のために、銀行も困りました。なぜか銀行もこのサービサーにだけは遠慮があるみたいです。
そこで、銀行は、「サービサーも企業再生をうたい文句にして居るから、両者共同してホテル再生で進もう。」と考えたのです。

会長と社長は大乗り気です。
名高いサービサーに債権を回されて半ば諦めていたホテルです。其れを再生させてくれるとは永年のメイン銀行様です。
銀行の指示に従います。
500万かけて監査法人に企業の診断をお願いします。診断が良しとなるとその監査法人に月100万以上で再建委員をお願いします。
後はサービサーと銀行と監査法人の話し合いです。

再建計画は経理の従兄弟の案、そっくり物が採用されました。
何よりきつかったのが保証人追求でした。
人の良い会長も社長も、ホテルが助かるというので自分の資産を全て開示して居ます。

サービサーと銀行の企業再生が決定しました。
会社に対してはサービサーは残債権を放棄し、担保も解除する。
銀行は、債権は免除しないが現在の金利を若干下げて今後20年分割を認める。
会長と社長は経営者責任で退任する。後継社長には従兄弟がなる。
と言うことでした。
しかし個人資産は徹底的に追及されて二人とも素っ裸になりました。
会長は自宅はじめ担保でない不動産を全て売却し、サービサーの返済資金とします。其ればかりでなく、5000万余の個人の預金も取られました。
社長は不動産こそありませんが、3000万の預金と上場株2万株を取られました。
全てサービサーの返済資金です。

私に言わせれば預金や株券を教える方に落ち度があります。
私がどんなに言っても、「全部取られるとは思っていなかった。」と言うお人よしです。
社長はその後一寸不便なマンションに移っています。
有料老人ホームには移れなかったでしょうか。
三男は職探しに悩んだ様子です。

しかしホテルはその後ますます隆盛です。
今まで揃えなかった設備も大分整えました。すると売上も尚良い方に循環します。

会長が果たしてその後幸せだったか解りません。
三男も一言も過去のことは言いません。

しかし今日の会葬者を見て、これでよかったのかと思いなおして居ます。






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