かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

これもリストラかしら

2007-05-09 | 事例
どうしても人員解雇が出来ません。
銀行には返済を減額し、公租公課の未払いは出来ますが、仕入れの金を遅らせることも出来ません。

一時の最盛期より売上は4分の1近くに落ちています。しかし人員はあの頃と変わって居りません。社会保険等完備しているこの企業から自発的にやめていく人も居りません。

銀行も指摘します。保証人の優良企業の社長も指摘します。
「適切なりリストラさえすれば、この企業は即、生き返ることが出来る。直ちにリストラをしなさい。」

社長はそれでもリストラをしません。
理由は単純です。
「景気も復活に向かっている。一旦首を切ると、この辺りではもう人の募集は難しい。なんとしても今の従業員をくい留めておきたい。
資金の不足は、銀行が貸せないから、保証人に依頼すれば良い。
貸して頂けないとわが社は倒産です。その時は保証債務をよろしくお願いいたします。と云えば、どんな保証人も助けてくれる。」
思っただけでなく、其れを実行して居ました。

誰がどう言おうが社長はリストラを実行しませんでした。
人員をそのまま抱えて居ます。
流木の伐採。その製材加工、販売と3つの部門がありますから、人員が多いから、どうしても伐採と製材は増えます。在庫が多くなり資金に響きますが温室育ちの従業員には無関係なことです。

5日が支手の決済日ですから、月末に保証人のところに行き、何とか保証人の振り出し手形を手にすれば良いです。
其れを2ヶ月くらいで返済すると云う構図を繰り返していけばよいのです。

毎月相当な赤字です。しかし一方では堅いところもあって保証人には返済約束は
守って居ます。
しかし銀行には、とうに金利だけ、公租公課も溜まっていきます。給料の未払いもついに出るようになりました。
それでも、仕入れは若干目を光らせるようになりましたが、人員のリストラには
てをつけません。
さすが社員も会社に不安を感じ始めてきて居ります。

今までも断ったり条件をつけていても、結局は手形を貸していた保証人は、ついに社長に引導を渡しました。
「このままではこの会社は絶対に潰れる。私も多額の損を背負うが其れは覚悟した。今月主だった社員で会議を開き、私に喋らしてくれないか。そうすれば今月だけは助ける。しかし来月からは何があっても助けません。私の覚悟はして居ます。」
社長も仕方なく保証人に主だった社員の前で喋らしたのです。

同業者の大先輩、此処の保証人であることも知って居ます。今までも何回も来社した顔見知りです。気楽な気持ちで聞いていた社員の顔が次第に真剣味を増してきました。

翌日はこれが噂となり、パートを含めた全従業員のひそひそ話です。
要は大改革をしない限り、この会社は長い事がない。特に人員は半分以下にしないと駄目だと云うことを知ったのです。
それにもう保証人は一切面倒を見ないと云っていました。
今月一杯で、この会社は終わりではないか と言う噂です。

直ぐに反応が出ました。パートの半分以上が辞めると言い出したのです。
近くの大手電気メーカーの工場が好条件でパートを大募集をして居ます。
これが影響しました。
ついで、伐採をやって居る従業員全員から、この事業を切り離し我々にやらせてくれと申し込みがありました。
こちらは望むところです。一番の金食い虫が離れます。
原木は幾らでも手に入ります。

そんな空気に追われてか。製材部門でも退職希望者が続々です。
退職希望を募ったわけでないですがそれ以上の効果が出たのです。

この騒ぎに社長は倒産を覚悟しました。人員が減ると世間の評判となり信用失墜で
商売など出来ないと思っていたからです。

しかし、一方では経費減と云う大きな効果が出ました。
其ればかりでなく、仕入先が返品を受け付け、余分な在庫を引き取ってくれたのです。以前から赤信号が出ていたためもあるでしょう。
退職金が保険積立で支払いに問題がないのも幸いしました。遅配分は3ヶ月くらいで支払います。

そして其れより効果があったのは残った社員のやる気でした。
優秀な社員は辞めました。
しかしそれだけに危機感は強く、売上減が殆ど見えなかったことです。

此処2-3ヶ月さえ何とか切り抜ければやっていけます。
今になって社長はリストラの重要さに気づいたのです。

これは去年の11月のことでした。

それ以後、保証人は電話もしませんでした。
しかし、毎月、6日の日はびくびくしていました。業界に不渡り情報が流れはしないかと云うことです。

5月7日保証人に、電話があり、社長が尋ねてきました。
今までの考え違いとご迷惑を掛けたお詫び、今後はもう全て自力で大丈夫と云う
報告でした。

まだ夜冷する信州の夜、この夜は暖かでした。






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