かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

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相続方法を変えた姉妹の確執②

2007-07-21 | 事例
I子はS子を恨みました。
自分だけ相続でよい思いをして、相続をしない私が自分の借りた債務でない父の借金のために虎の子のマンションを差押えられるなんてと思うと平穏な気持ちでは居られません。
今でしたら、家賃も直ちに差押えられるでしょうが当時の銀行は其処までしませんでした。落札になるまで差押えられたマンションの家賃が入ったのがまだ救いです。

しかし此れだけでは有りませんでした。
自宅は、建物は夫名義ですが土地はI子の名義です。此れを任売で売りなさいと要求です。
マンションは父親から譲られたものですからまだ良いとしても、この土地は父の借金とは関係ない土地です。
銀行も当初は見逃そうとした感じがあります。しかし裁判までしたI子を見逃すわけには行かなくなったのだと思います。
此れも強制競売となって、最初の競売価格が出て、それにほんの少し上乗せをして夫が漸く買戻しをしました。
以後銀行からの請求は一切ありません。

その間のS子はどうなっていたでしょうか。
全ての店子の振込先を変えようと思いましたが、そうすれば全部の家賃が差押えになるから、我慢しようと云う執事の言葉を尊重しました。

しかも其れも1年くらいの間でした。I子のマンションが差押えになると殆ど同時に全ての担保が競売開始になったのです。又家賃も全て差押えになりました。

それでもS子は執事と相談をしつつ無駄の抵抗を続けています。
いわゆる執行妨害です。
無駄で有っても空き室に占有者を入れようとか、マンションの片隅に自転車置き場の建物を作るとか、「蟷螂斧に向かう」の蟷螂以下の抵抗です。
何れも競売阻止にはならず、難なく競売は実施されました。

S子は其の中の一つに住んで居ましたが、立ち退きの強制執行に会って居ます。
哀れの姿でした。

貸家にに移ったS子は、間もなく執事と陰惨な喧嘩をして居ます。
第一に父が扱っていた株券が意外と少ないのです。執事は此れで全部と云っていますが、信用できません。
それに、自分が回収した家賃もどうも少ないように思われるのです。
調べられる限りにおいては正しいですが、全部を調べられる訳でなし、執事をいろいろと問い詰めましたが、ついに解からずしまいです。

此れで半同棲だったS子と執事の間の仲は切れて、S子は誰にも
連絡取らずに姿を消しました。
平成15年の話です。

I子はその間いろいろと変化がありました。先ず夫が癌で先立ったことです。
当然夫が買い戻した自宅は相続になります。
残債務はまだありサービサーが回収に来たら困るというので、名義は変更しませんでした。無くなった夫のまま、時効になるのを待ち、時効になったら正式に名義変更をする予定です。

ところが時効になる半年前に、急にサービサーから通知が来ました。
残債務のことで話し合いたいという通知です。
I子は思い切って出かけました。良い担当者で30万で残債務を放棄する和解をする事になりました。
ただし此れはI子の分だけ。S子は知っていれば同じでよいですから連絡してください。今がチャンスですよと盛んに薦められましたが、本当にS子の居場所は解かりません。
しかしI子は長く苦しめられた保証債務と別れ本当にほっとしたのです。

最近I子は幼い頃良く行ったデパートに足を向けました。
空いて居る和服売り場を見ていると偶然S子と会ったのです。

会った瞬間今までの憎しみは消えて懐かしさが一杯です。S子も同じで会ったと思います。
S子はその後、都心近くマンションを買い、其処にほっそりと生活しているらしいです。仕事は何もせず、食いつぶしていますが年金の入る宛てもありません。
ただ、鍼を勉強し、それで何とか生活の目鼻はつきそうと云うことです。

あの父が残した資産を独り占めにして、借金を払わずにすべてを残そうとした頃の覇気は消えて居ます。

しかし、一旦手にした資産を守りぬこうとした努力は何たいていなものではなかったと思います。其れが一つづつ離れていくつらさは言葉には表されなっかたでしょう。
執事に騙されたと言う子持ちももう浄化されています。
艶が消えた顔色が何より其れを物語っていました。

遺産を放棄した姉も、全て相続した妹も今は同じような境遇です。
いや全てを放棄した姉の方が今の境遇は勝っているでしょう。

お二人とももう60歳に近いです。
これからの幸せを心から祈ります。






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