かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

おべっか使いのアドバイス

2007-07-25 | 事例
Y子は東京近郊の大きな料亭の女将です。
単なる女将でなくて、親からの引継ぎで、其の不動産ごとY子の名義です。
今時、料亭など流行らず何処も経営不振で、此処も永年のY子の顔で
何とか持っては居ます。が、リスケこそやっていませんが、銀行返済も
滞りがちです。

Y子の主人はY子とは別に土建業者です。此れも、同業者が続けて
倒れる中で頑張っています。ただ銀行借入の時、5億の根抵当に料亭を
入れて居ます。Y子は保証人にもなって居ます。
料亭自体はほんの僅かな借金が有り、其処が担保順位は1番です。

Y子が主人から寝物語で土建会社の倒産のことを聞いたのは今ら1年半くらい前のことです。
Y子は思わず布団の上で飛び上がりました。
「料亭が取られる。親の代からの料亭が取られる。」ただそれだけでした。

自己破産をすると云う事で弁護士を依頼しました。
弁護士介入通知は仕入先を静かにしました。
しかしこの弁護士とは不動産処理、特に料亭の処分のことで意見が別れ、弁護士は「では勝手に不動産は処理してください。処理し終わったところで私の方に引継ぎましょう。破産はそれからです。」と云う事になりました。
当分の間は銀行折衝、特に不動産処分だけです。

銀行は4行。担保処理も着々と済んでおります。
しかし最大手の地元銀行のメイン担保は料亭です。
銀行はY子に債務を弁済するか、そうでない時は料亭を処分するように何回も言って来るようになりました。

Y子は主人から主人の会社が危ないと聞いた翌日から、弁護士や
コンサルタントを尋ね回ったり、料亭にも呼びました。
何とか親の代からの料亭を守り抜きたかったのです。

いろいろの意見がありました。でも大略すると殆どY子に長期でも良いから返済の能力がない限り、料亭は取られる。と云う意見でした。
其れを前提にいろいろ考えましょうと言うわけです。

主人も薦めます。
「今の料亭には余分なものを払っていく力は全然ない。むしろ営業を止めた方が良いくらいだ。料亭を売ろうではないか。更地にする仕事を引き受ければ4-5千万は握れ、二人の住居費ぐらい出る。」
Y子には、主人の言葉でも料亭が無くなる意見ではどうしても同意できません。

Y子の意を読んで、ついにはこんなことを言う人も出ました。
「今の第一担保は、枠だけは、時価に近い根抵当権がついている。
女将の顔で枠一杯借りていると云う証言を、其の銀行に頼みましょう。
競売も出来なくなる かも知れませんよ。」
しかし銀行は「銀行は嘘の証言は出来ません。」と素っ気ない返事が戻ってくるだけでした。

次第にインチキっぽいアドバイスが出てきます。
無責任でも、おべっか使いの方が金になると踏んだアドバイサーです。
「この不動産は車庫も、それどころか離れまで担保になっていません。しかし固定資産税は払っていますから建物です。簡単に競売が出来ません。」

「スポンサーを見つけることです。競売阻止のために任売を一旦承知しましょう。3ヶ月は銀行は待ちます。3ヶ月経ったら又お願いしてもう3ヶ月延ばすのです。幸いご主人は不動産をやって居ましたから上手くやってくれるでしょう。この間にスポンサーを探しましょう。お宅のブランドならば必ずスポンサーは見つかります。その間は私どもでお手伝いします。」
何ヶ月かは顧問料が欲しい下心の助言です。

冷静に判断すればおかしい助言でも、Y子は料亭が残るという意見以外は取り上げ無いようになっていました。
そして、何時の間にか、料亭は守れると信じる様になって居たのです。

そうしたアドバイスのある毎に、Y子は救われたと思い込み、主人相手に
燃えたものです。
苦しさの中での光明、其れを見出したY子が最高に幸せを感じた時かも知れません。

しかし、Y子の目論みは自分だけの満足です。世間で通用することではありません。
不動産が競売になったのはそれから直ぐです。
今までのおべっかアドバイスは何の役にも立ちません。
場所も良かったために大手ゼネコンに落札されました。
後は分譲かマンションでしょう。

Y子は強制執行されても立ち退かないと息巻いておりましたが、さすがに其の寸前には立ち退きました。

料亭を続けることが第一ですから、少しでもあまった金は返済に回し、手元には残っておりません。
勿論、主人の希望した整地料も入りません。

近所の人は何処に引っ越したか知りません。
保証債務が直接の原因なんて誰も思いません。
有名な料亭も時代の波に負けただけだと思っています。

隣町のスーパーで買い物をして居るY子の姿を見かけたという噂もあります。






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