かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

決断

2008-01-23 | 事例
M鉄鋼の専務が辞めたと云う噂が流れた時、知っている人は
みな一様に「此れでM鉄鋼も終わりか。」と噂したものです。
「いや専務は辞めたのでなく、若い社長に辞めさせられたんだ。」
と知ったかぶりに云う人も居ます。ことの真相は兎も角、M鉄鋼に
於いては社の内外を問わず専務の存在は大きかったのです。

全部で14名の鉄鋼部品メーカーのM鉄鋼。今は月商も3000万内外です。
このうち、専務は一人で1000万以上の注文を取って居ます。
専務が居なければ、その注文が無くなることも予想できます。
専務は自分の存在感を注文と云う実績で示しておりました。

しかしながら、会社は赤字の連続でした。
社長はリストラもし、資金の潤滑を計るべくリスケも
しなければと考えて居ります。しかし、先代の時から
この会社に居る専務は反対です。「そんな恥ずかしい事、
M鉄鋼が出来るか。資金が不足ならば儂が売上で作ってやる。」
と云うわけです。しかし専務が無理をして売ると云う事は、
それだけ粗利が少なくなり、赤字は増え、結果として、資金の
不足が悪循環となって増えて居ました。

手形は一切ありませんから、赤字は即資金に影響します。専務が
嫌っていたリスケも、いまや金利だけの返済も増えて居ります。
社長はノンバンクからは借りて居りませんが、親戚知人まで
借り歩いております。結束の固い同郷人だからみんな心配を
して貸して呉れましたが、其れとて限度があります。

母親に又無心に行った時です。
「此れしかないのよ。もう此れが最後ですよ。
今まで何回も借りに来て居るが、少しは役に立っているの。
このお金最後だから、自分の思う通りに使ってね。人に
遠慮する事無いのよ。若し失敗したら潔く、世間様に手を
突いて謝る事よ。」
何かMの心に引っ掛かったみたいです。

社長と専務が大激論をしたらしいのは、それから
暫くたってからです。社員の帰社後ですから誰も
聞いては居りません。翌朝、専務の姿が見えず、社長から
「急ですが専務は暫く休みます。」と発表がありました。
そして直ぐに関係者を集めて、
「専務が急に長欠することになりました。そのことについて。」
と会議が持たれたのです。

社長はある程度正直に話して居ります。
このままで行けば、皆さんの給料も2ヵ月後くらいから、
まともに払えなくなること。会社はどうやりくりしても
4ヶ月とは資金が持たないこと。しかし、一方4ヶ月有ると
云う事は其の間に、立て直しをすれが大丈夫と云う事ででもある。
専務が居なくなって心淋しいかも知れないが、逆に今までのように
何もかも上から指示されるのでなく、自分で自分の思うとおりに
出来ると云う事でもある。皆が一丸となれば何でもできると思います。
皆さん、頑張って立て直しをしましょう。
社員の目の色が違ってきました。

社長が先ず動いたのは、今までの専務の得意先を
回ることです。特に1軒逆ザヤのところは切っても
止むを得ないと腹を決めています。幸い専務の出した
価格は、通常ではありえない無理の価格の事を承知して
居ますから、何処もそう揉めることなく、又専務のことで
質問も無く、社長の希望に近いところに落ち着きました。
中には新体制でやるんだなと、ご祝儀の注文を呉れる
ところすらありました。

金融関係は慇懃無礼の態度で回っています。
基本は3ヶ月金利すら払えないという線です。
仕入先も締め25日の現金払いを4ヶ月だけ半分を
更に1ケ月繰り延べにして居ます。

ただ此処で全員が力付けられたのは、専務のように
傑出した一人が居なくなっても其の後さえしっかりやれば、
殆ど影響なく乗り切れると云うことです。逆に全員に
やる気が出て会社とすれば大きなプラスと云うことです。
それに専務一人が退社すれば、従業員3名をリストラしたと
同じ効果です。世間は其の会社の一人でなく、全体の動向を
見ているのです。

もう2ヶ月半を過ぎています。
今のところ黒字になってきましたが、金融機関と仕入先の
約束が出来るかどうか難しいところです。

お金を借りた親戚知人と社員のことを考えると
会社は絶対に潰せません。社長の決断する態度は、
ますます要求されると思います。





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