かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

夜逃げと9件のサービサー

2008-01-31 | 事例
Kの手元には9件のサービサーからの催告書があります。
送られた用紙はタイトルもフォームもばらバラですが、
何れも請求書であることには間違いありません。

Kはこんなつもりでは有りませんでした。
平成13年、不渡りの出る前日の夜、Kは持ち物はただ一つ、
自慢の碁盤だけを持って、自宅と会社が同じビルから姿を
晦ませたのです。妻は前年に逝きましたし、二人の娘は
嫁いで居ります。心配する家族は居りません。
Kが何より恐れていたことは、不渡りで債権者に
吊るし上げを食うことです。特にプライドの高いKにとって、
債権者の前で頭を下げる事など、考えても出来ることでは有りません。
その結果、娘婿の一人が薦める夜逃げを選んだのです。残整理は、
その娘婿の紹介してくれたグループがうまく処理をしてくれる予定です。

Kの落ち着いた先は自宅から1キロくらいしか離れていない、
賃貸マンションです。
妻亡き後、付き合っていた同郷の女のところです。
女は一人でカラオケスナックを経営した居ります。
そこでひっそりと暮らしていたのです。
籍を公にしなくても健康保険を除いては何とかなります。
其の健康保険は区役所に行くと、超易い保険料で面倒を
見てもらえたのです。都会の雑騒はそんな男を飲み込んで
誰にも会わず、Kは碁と株で5年間を過ごしたのです。

5年過ぎました。
Kは二人の生活をもっときちんとしたものにしようと思い、
先ず今までの賃貸から分譲に変えることにしました。
5年立てば時効になるとも聞いています。
ですからもう、共有にしてもよいでしょうが、安全を
見て女の名義にしました。Kは其処の居候です。でも現住所を
正式に此処に移しました。もう住所を公にしても、個人情報の
保護も有るし、簡単には債権者にも解かるまいと思ったのです。

移って4ヶ月目、珍しく1通の手紙が届きました。
間違いなくK宛です。封筒の送り主はKも知りません。
此れが9件のサービサーの第1号でした。
「銀行から譲渡を受けました。このお支払いを相談したい。」
と云う内容です。放っておきましたら次に裁判所から訴状とか
言うものがついて、そして此方が敗訴したらしいです。
しかし差押は無く、請求書が毎月来るようになったのです。

其の頃から次から次にいろいろの書類が届くようになりました。
借入銀行は保証協会も含めると4行になります。
バブルの頃、個人でマンションを買いました。
銀行や生保から借りていました。其の関係のサービサーが3件。
もう1件は、カードを使いかけで姿を晦ませたためにカード代金。
キャッシングがあります。

やはり今でも住民票は幾らでも公開するのでしょうか。
個人情報を守れと叫びたくなりますがもう遅いです。
しかし何処も電話も無ければ尋ねても来ません。
勿論、K名義の電話は携帯しかありませんし、部屋も
一応家財差押を考えて1部屋借りたことにして居ます。
大切な碁盤とコンピューターだけは其の部屋に置いて居ません。
何も無いと云える典型的な部屋です。

9件のサービサーからの督促状にも変化が見られます。
1時毎月来た督促即状も、今も続いているサービサーは、
3件しかありませせん。みんな、おろぬいてきました。
中には未だ2回しか来ないところも2件有ります。
しかも、気がつくと殆どが単に請求金額を知らせるだけでなく、
「幾らで和解をしましょう。」と和解額を書いています。
其の額もばらばらです。50万から200万までです。

最初1件来てたちまち9件になった時はどうしようかと
少しおろおろしましたがどうも無いと解かると平気にはなりました。
しかし気持ちは悪いです。自己破産をすればもう同時破産が
出来て簡単でしょうが、Kは破産と云う言葉が大嫌いです。
万一、その時に債権者とばったり会ったらと考えるとそれだけで
体に虫唾が走ります。そのくらいならば、もう1度夜逃げをします。

もう時効になって居るだろう。そうも思います。
しかし公示送達と云う方法で訴訟など行われて居ないかなど、
余分なことが頭に浮かび、時効の援用にも躊躇します。

破産は嫌だ。時効になって居るか解からない。
和解するにも9件分のお金は無い。
相手が諦めるまで我慢することも辛い。何のために5年間も、
世間から消えていたのか。Kには誰にと云うことなく怒りが
巻き起こってきます。

夜逃げは兎も角、債権の処理と云う事については、
現実にはKのような人がが多いのではないでしょうか。





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