久しぶりのフランス映画
フランソワ・オゾンの最新作
「スイミング・プール」も「17歳」も私の大好きな女優さんが出ていて、この監督を知ったようなものだ。
女性の心理描写が繊細かつ大胆に描かれていて、ミステリアスなのが魅力だ。
主人公クロエがくせのないまっすぐな髪を切るシーンから始まった。
そうして婦人科での診察シーン
これからの展開を思わせるようなちょっとショッキングな粘膜のような映像
原因不明の腹痛の原因はわからず精神分析医の元へ
随分と短くなった髪に良く似合うカジュアルでシンプルなファッション
通うことになった部屋への螺旋階段
待つ間に必ず鉢植えをチェックするのが不思議だった。
土で汚れた手はどうするのだろうかと気になってしまうばかり・・・
だが、これも二つの違いのヒントなのだろう
精神科医とのカウンセリング場面
仕事場の美術館の展示作品の変化
じっと見つめる猫のまなざし、しっぽ、体のうねり
猫のアクセサリーや内臓
正反対の双子の男たちの言葉やしぐさ
その間ですべてが揺れ動き出すのだ
やがてどれが本当でどれが想像の世界なのか
観ているうちに
どちらが、と、わからなくなっていく
騙されているのは実は彼女ではなく、私なのだろうかと・・・
原因不明の腹痛は双子の片割れだろうと最初から見当はついてはいたが
螺旋階段や美術館の中をさまよって行くうちに
こちらまでいつの間にか訳がわからなくなっていくような気分だ
「この映画では夢を現実のように、現実を夢のように撮った」と監督は言うのだが
心と身体のかい離したクロエの
本当の現実の世界を私は見つけ出せるだろうか
そつのない意外な終わり方をしたのには少し気が抜けたが
ほっとしたようで、また終わりのない何かが始まる気がして恐ろしかった