ぽぉぽぉたんのお部屋

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ニトラム

2022-05-05 | 映画のお話


1996年4月28日にオーストラリア・タスマニア島のポート・アーサーで起こった
無差別銃乱射事件の犯人マーティン・ブライアントの生い立ちを知った。
子どもの頃、同級生から呼ばれていた「ニトラム」の意味がわからなかったが
彼の名「マーティン」を逆さに読んでいくとニトラムになるという。
私には運動が苦手のごくふつうの発達障害に思えた。
事件からまだ25,6年しかたっていない。
そんなに昔ではないがタスマニアの田舎では、発達障害の子どものためのカリキュラムなど
なかったのだろう。

日本もそうだった。
入学する息子のため、一生懸命駆けずり回ったがどうにもならなかった母親を知っている。
彼女はうつになった。

彼の両親はマーティンとは一度も呼ばなかった。どうしてなのだろう?
たくさんの思いを込めて付けた名前のはずなのに・・・
普通の子になれなかった息子は、母親のあきらめの混じった愛情と優しく包もうとする
父の愛のなかで育った。
両親もマーティンも精一杯生きてきたはずだ・・・

でも父は脆かった。夢をつかみ損ねた喪失感はあまりにも大きく亡くなってしまう。
いつもおだやかに彼を見守っていてくれた父の死
唯一自分を受け入れてくれていたヘレンの死
ただ楽しかっただけなのにヘレンはあっけなく死んでしまった。
自分でない自分が殺したことはわかっているはずだ。

産み育てた母はいつも冷静に息子を見ている。時には冷徹なように思えるが
どうしても普通の子にはなれない息子への思いは複雑だ。
本当はマーティンを一番わかっていたはずの母は何も出来なかった。
じっと遠くを見つめるように煙草をくゆらせて何を思うのだろうか。
私には彼女の気持ちがわかるような気がした。
子育ては取り返しがつかないことになるかもしれないことを

タスマニアは囚人の流刑地だった島だ。
花火から銃へと興味が変わり、執着していくのを防げなかった。
簡単に銃が買えるオーストラリアの制度が恐ろしい。
今もマーティンは刑務所にいる。もう50代半ばにさしかかろうとしているはずだ。

コメント
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