

金木犀が終わりに近づいている。
先日の雨に祟られ無残に花が散っている。
金色の雪が降り積もったように地面は橙色の花で覆われている。
数週間前にはむせるほど香っていた、あの匂いはもうほとんど消えている。
気付けばもう神無月も晦日。
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金木犀に吹く風 歌と文 いざわひさよ
木犀の季節終わりて街がまた透明な風とり戻す夕(ゆう)-1997年-
木犀という植物には金と銀があるらしいが、私たちがよく目にするのは金のほうである。
だから、勝手な思い込みかもしれないが、金木犀の香りがしているあいだは、街が金色の「もや」にかかっているような気がする。
空気は半透明。香りとの相乗効果で、少し酔った気分にさえなる。
その香りがいつのまにか消えると街は透明な空気をとり戻し、冬への準備に入る。
そんな空想にふけってしまうのは私だけだろうか。
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