アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

日本人好みの ディレイドスチール

2009年07月22日 | Weblog
 1年半ほど前に、「日本人の好きなもの―データで読む嗜好と価値観」という本が出版された。NHK放送文化研究所世論調査部が編纂したもの。と、いうことは、この本が、「日本人が好きなもの」の基準となる。天下のNHKですから。すし、みそ、緑茶、ビール、キャベツ、いちご、アイスクリーム、和風一戸建て住宅、カジュアル、靴、ダイヤモンド、食事の支度、国語、テレビを見る、プロ野球、ボウリング、読売ジャイアンツ、浦和レッズ、イチロー、温泉・湯治、ラジオ・テレビ欄、ニュース・ニュースショー、氷川きよし、オーストラリア、北海道、富士山、四万十川、犬、桜、うぐいす、演歌・歌謡曲、モーツァルト、ゴッホ、司馬遼太郎、ピアノ、ありがとう、昭和(戦後)、織田信長…

 掲げたのは、本の帯などの宣伝に使われているものの一部だが、笑ってしまいました。何がおかしかったかって?ほぼ8割が、私が好きなもの一致したからです…自分は日本人だと観念しました。「観念」はおかしな使い方だろうって?ブータン人だとおもしろかったのに!ってことで…。

 甲子園の高校野球!これも、日本人が好きなものです。今、日本各地で甲子園への戦いたけなわ。世の中が変わったなあと思うのが、地区大会の準決勝あたりから、地元NHKが、テレビで実況放送をするという点です。正午からは、NHK教育テレビで中継。13時頃またNHK総合テレビで中継する。甲子園大会と同じ扱い!いかに日本人が「野球好き、甲子園好き」かを証明しているといえます。インターハイ地区予選の、サッカー、バスケットボール、バレーボール…テレビ中継しますか?全国大会のセミファイナルあたりからなら一部競技をテレビ中継しますけどね。

 甲子園の地区予選をテレビ観戦していて、野球の指導をしていたことを思い出しました。誰がって?私がですよ。野球の監督!日本人なら、誰でも一度はやってみたいと思うのでは。

 印象に残っているプレイは・・・
 延長12回の表に2点取った。勝利を確信しました。なおも、満塁。四番打者の登場。ここで、監督の私は何をしたか!「ホームランを打て」のサインを出したのです。いつも笑わない四番打者くんが、ニヤリとしました。そして、サイン通りホームラン。この試合6-0で勝ちました。こういうこと、あるものなのです。サインに忠実な四番打者くんは、早稲田大学の法学部へ進み、弁護士事務所を開いています。この話、日本人好みだと思います。

 エース不在の年、「今年はダメだな」と思っていたら、転校生。大阪からの転校生がピッチャーだった。「願ってもない」という言葉は、こういうときに使うものだなと、つくづく思いましたね。おかげでその年も、首尾よく勝ち進んでいった。そして、先攻のゲームで延長戦に入った。大阪から来たピッチャーが自らソロホームラン(注:楽天のマー君ではありません)。ベンチは、大騒ぎで、大はしゃぎ…。その裏サヨナラ負け…。ゲーム終了まで、決して「はしゃいではいけない」という教訓…高価な教訓でした。ピッチャーのその後?消息不明になっています。チョッピリ日本人好みの話かな?

 ピッチャーが投球動作に入った瞬間スタートを切るのが通常の盗塁。そうじゃない盗塁…キャッチャーがピッチャーに球を返す瞬間や、ピッチャーがまだ投球動作に入っていない時などに走るものを、「ディレイドスチール」といいます。誰でも知っているって?親切をモットーとしていますから、知らない日本人もおられるかと思って…。

 超が付く鈍足の、ライトで9番の選手がいた。ツーアウト、ランナーなしから、ライ9くんが出塁。次打者への一球目…判定はボール。ライ9君は、ゆっくりとセカンドへ向かっていた。キャッチャーは、ボールをピッチャーへ返そうか、セカンドへ送球しようか逡巡していた。セカンドもショートも、ベースカバーに入るかどうかやはり逡巡していた。ライ9くんセカンドへ到達。なんと、ゆっくり走っているように見えたのは、全力疾走であり、盗塁だった!ディレイドスチールの典型でした。球場内に一瞬静寂がよぎりましたねえあのときは!何が起こったのかよく分からない。遠藤のコロコロPKみたいなもの。 

 ライ9くん、高校を出てスイミングスクールでコーチをしていました。「結婚するから媒酌人を」と、私を訪ねてきてくれました。「No!」というのが嫌いな私のこと、会社の上司に頼めないのか等を確認した上で、「Yes!」媒酌人をしました。そして、数年後、2児の父となっていたライ9くんが、また訪ねてきてくれました。「看護師を目指す」と、いうのです。半年の猛勉強の結果、「看護学校合格」。現在、大きな病院の看護師の中心的存在になっています。
 ライ9くん、看護師になったのも、ディレイドでした。これがオチ。
 日本人は、こういうサクセスストーリー好きだと思います。ちなみに、全て実話です。念のため。