アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

八百長を証明したレヴィット教授の計算外

2011年02月08日 | Weblog
 シカゴ大のレヴィット教授とジャーナリストのダブナー氏との共著「ヤバい経済学(東洋経済新報社 2006年)」…この本で、大相撲も取り上げている。どんな取り上げ方か?八百長の分析なんですけど…。
 
 レヴィット教授らの調査…
 1 期間:1989年1月から2000年1月まで(11年間!)。
 2 対象とした取組み:本場所の上位力士281人による3万2000番の取組。
 3 さらに絞った:14日目まで7勝7敗と勝ち越しがかかる力士と、8勝6敗と勝ち越している力士の千秋楽での対戦。
 4 さらにさらに参考資料:7勝7敗の力士の8勝6敗の力士との過去の勝率(千秋楽ではない)は…48.7%。ほぼ五分五分。

 <その結果どうだったか?>
 千秋楽の対戦になると7勝7敗の力士の8勝6敗の力士に対する勝率は、79.6%だった。7勝7敗の力士が、「あと1勝で勝ち越しだ。千秋楽だから、死ぬ気で頑張ろう」と、持てる力を発揮した…?
 そのあとの両者の取り組みも追跡している。
 次の場所での取組(千秋楽とは限らない)では、前の場所で勝った7勝7敗の力士の勝率は約40%。この2人の力士が次の次の場所で対戦すると勝率は約50%に戻る。
 と、いうことは…千秋楽で勝ち越しの星をもらったお礼を、次の場所で返す。だから勝率40%。次の次の場所からは、お互いに貸し借りなしなので対等に戦う…。

 さらにまだある…日本のマスコミで八百長報道が出たすぐ後に開かれた本場所千秋楽では、7勝7敗の力士の8勝6敗の力士に対する勝率は、79.6%ではなく、約50%に下落した…。
 教授らの考察は、「力士たちの間で取引が成立していると考えるのが妥当。大相撲に八百長が無いなどと言えない」。
 
 このようなおもしろい調査をしていた!日本人ではなくアメリカ人が!相撲協会も是非調べてみてほしいもの。非常におもしろいので。

 それで、レヴィット教授らは、「八百長はある」と結論づけているわけですが…千秋楽で、7勝7敗が8勝6敗に勝つのって八百長と言えるのか?日本では、これを八百長とはいいません。
 八百長というのは、「まともに争っているようにみせながら、事前に示し合わせた通りに勝負をつけること」です。

 日本には、人情という言葉がある。千秋楽で顔を合わせた、7勝7敗と8勝6敗、8勝6敗がわざと負ける。事前に示し合わせていないので、八百長ではない。人情ですよ。日本人は人情が厚いのです。
 次の場所で顔を合わせたら、人情で頂いた勝ち星をお返しする。当然でしょう、これを日本では「義理を返す」という。これも示し合わせていないので、八百長ではない。

 では、八百長報道後の本場所千秋楽では、7勝7敗の力士の8勝6敗の力士に対する勝率は79.6%ではなく、約50%に下落したのはどう説明するか?それは、「李下に冠を正さず」です。「八百長をしているのではないか?」と疑惑の目で見られているわけですから、人情をかなぐり捨てたわけ。そのような場合もあるのです。義理も人情も、風向きや空気を読んでの話です。

 と、いうわけで、レヴィット教授らの「大相撲に八百長はある」という結論は、日本人というものを理解していない早とちりということです。日本人は、「義理と人情」の国民なのです。