日本で販売されている食品にもメラミン混入の可能性があることが9月20日の夕刊、翌日の朝刊で報道されました。21日の朝刊(大阪版)では日経を除く朝日、毎日、読売、産経が一面トップで報じています。朝日は前日夕刊もトップです
連日トップというだけで危険なものという印象を与えられますが、読者の関心はこのメラミンがどの程度危険なものかという点にあるでしょう。新聞各紙はメラミンの危険性に対する説明を掲載していますが、説明にはかなりの差があり、各紙の姿勢を表すものとして興味深いものがあります。
日経と産経は、大量に摂取すると腎臓や膀胱に結石などを引き起こすとし、米国のペットフード事件や中国の粉ミルク事件などを紹介しています。毎日は、メラミンは毒性が低いとされ、米食品医薬品局(FDA)は1日摂取耐容量を体重1kgあたり0.63mgとしているとし、中国での死亡事件を紹介しています(NHKは、メラミンの毒性は低く、長期間大量に摂取すれば障害が起きるという専門家のコメントを出していますが、これは妥当だと思います)。
朝日は、2面の最下部というあまり読まれない場所にFDAの1日摂取耐容量など、まともな説明をしていますが、読まれやすい社会面には「慢性症の恐れ」という見出しで、里見宏・健康情報研究センター代表の話を掲載しています。一部引用します。
『実態が不明な段階から、「健康被害は出ていない」点が強調されているのは気がかりだ。この種の化学物質は、多量に摂取した場合の症状以外に、慢性的な症状が現れる危険性がある。』
現在、健康被害は出ていない、と強調されているとは思えません。また「この種の化学物質」とはどのような種を指しているでしょうか。慢性的な症状について少し調べてみましたが、結石以外、該当するものが見あたりません。「少量でも危険がある」と思わせる、この短い文章には3箇所も疑問点があります(朝日の記者は疑問を感じないのでしょうか)。そこで、健康情報研究センターについて少し調べました。
健康情報研究センターのHPをみると、化学物質や遺伝子組換食品などの危険性を指摘するのが主な内容のようです。2006年「婦人之友」10月号掲載された里見宏氏の放射線照射に関する批判記事に対し、日本原子力産業協会は編集長に対し、14箇所について問題があるとし、その事実確認を求めています(参考資料)。やはり特殊な立場の人物という印象を受けます。
新聞は専門家の意見という形で自社の主張を載せることがよくあります。掲載者が責任逃れしやすい便利なものです。しかし、専門家といっても一部にだけ受け入れられるような特殊な人物は避けるべきでしょう。里見宏氏のHPにはまともなものもあるようですが、「フッ素で骨肉腫」「アトピー性皮膚炎の塗り薬と発癌リスク」など論文発表の段階のセンセーショナルな情報を流しており、信頼性に疑問を感じます。
このような人物を起用してまで、危険を強調する朝日の姿勢には強い疑問を感じます。何を意図しているのでしょうか。BSE騒動を引き起こした韓国のMBC放送を思い出します(参考)。高濃度の汚染ミルクを毎日大量に飲む乳児と加工食品に混入したものを少量食べるのとでは影響は全く異なります。余分な心配をしなくて済むよう、正確な情報を伝えるのが新聞の役割であり、流言蜚語を伝えるものではありません。
『日本ではMRL(農薬などの残留基準)超過があると直ちに回収や廃棄という対応を執ることが多いので誤解を招きやすいが、英国やドイツでは超過した内容を評価して健康上問題がないとされれば回収は行わない。ただし超過の原因については調査し再発防止策を執ることになる』(食品安全情報blogより引用)
もし日本で、厚労省が「基準は超えているが健康に害はないので食べてください」などと言ったら、メディアは政権が倒れるほどの大騒ぎをすることでしょう。日本は英国やドイツと同じ先進国ですが、このあたりの事情はちょっと違うようです。
連日トップというだけで危険なものという印象を与えられますが、読者の関心はこのメラミンがどの程度危険なものかという点にあるでしょう。新聞各紙はメラミンの危険性に対する説明を掲載していますが、説明にはかなりの差があり、各紙の姿勢を表すものとして興味深いものがあります。
日経と産経は、大量に摂取すると腎臓や膀胱に結石などを引き起こすとし、米国のペットフード事件や中国の粉ミルク事件などを紹介しています。毎日は、メラミンは毒性が低いとされ、米食品医薬品局(FDA)は1日摂取耐容量を体重1kgあたり0.63mgとしているとし、中国での死亡事件を紹介しています(NHKは、メラミンの毒性は低く、長期間大量に摂取すれば障害が起きるという専門家のコメントを出していますが、これは妥当だと思います)。
朝日は、2面の最下部というあまり読まれない場所にFDAの1日摂取耐容量など、まともな説明をしていますが、読まれやすい社会面には「慢性症の恐れ」という見出しで、里見宏・健康情報研究センター代表の話を掲載しています。一部引用します。
『実態が不明な段階から、「健康被害は出ていない」点が強調されているのは気がかりだ。この種の化学物質は、多量に摂取した場合の症状以外に、慢性的な症状が現れる危険性がある。』
現在、健康被害は出ていない、と強調されているとは思えません。また「この種の化学物質」とはどのような種を指しているでしょうか。慢性的な症状について少し調べてみましたが、結石以外、該当するものが見あたりません。「少量でも危険がある」と思わせる、この短い文章には3箇所も疑問点があります(朝日の記者は疑問を感じないのでしょうか)。そこで、健康情報研究センターについて少し調べました。
健康情報研究センターのHPをみると、化学物質や遺伝子組換食品などの危険性を指摘するのが主な内容のようです。2006年「婦人之友」10月号掲載された里見宏氏の放射線照射に関する批判記事に対し、日本原子力産業協会は編集長に対し、14箇所について問題があるとし、その事実確認を求めています(参考資料)。やはり特殊な立場の人物という印象を受けます。
新聞は専門家の意見という形で自社の主張を載せることがよくあります。掲載者が責任逃れしやすい便利なものです。しかし、専門家といっても一部にだけ受け入れられるような特殊な人物は避けるべきでしょう。里見宏氏のHPにはまともなものもあるようですが、「フッ素で骨肉腫」「アトピー性皮膚炎の塗り薬と発癌リスク」など論文発表の段階のセンセーショナルな情報を流しており、信頼性に疑問を感じます。
このような人物を起用してまで、危険を強調する朝日の姿勢には強い疑問を感じます。何を意図しているのでしょうか。BSE騒動を引き起こした韓国のMBC放送を思い出します(参考)。高濃度の汚染ミルクを毎日大量に飲む乳児と加工食品に混入したものを少量食べるのとでは影響は全く異なります。余分な心配をしなくて済むよう、正確な情報を伝えるのが新聞の役割であり、流言蜚語を伝えるものではありません。
『日本ではMRL(農薬などの残留基準)超過があると直ちに回収や廃棄という対応を執ることが多いので誤解を招きやすいが、英国やドイツでは超過した内容を評価して健康上問題がないとされれば回収は行わない。ただし超過の原因については調査し再発防止策を執ることになる』(食品安全情報blogより引用)
もし日本で、厚労省が「基準は超えているが健康に害はないので食べてください」などと言ったら、メディアは政権が倒れるほどの大騒ぎをすることでしょう。日本は英国やドイツと同じ先進国ですが、このあたりの事情はちょっと違うようです。