噛みつき評論 ブログ版

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朝日とNHKのトップニュース・・・何を基準に選ぶのか

2008-12-04 09:24:52 | Weblog
 12月1日、昼のNHKニュースのトップは黄柳野高校が喫煙指導室を設置した問題が取り上げられ、校長以下が頭を下げて謝罪するおなじみの光景が映し出されました。彼らが直接向い合っているのは記者とカメラですが、全国民に向かって謝罪しているような格好になります。

 容疑は県青少年保護育成条例違反(喫煙場所の提供)で、学校は家宅捜索を受け、関係者は書類送検される方針とされています。しかしこの程度の微罪がなぜトップで大々的に報道されなければならないのかと不思議に思います。

 同校は不登校の生徒を全国から受け入れている全寮制の学校で、231人中72人が喫煙指導室で喫煙していたこと、指導には限界があり、こういう方向しか考えられなかったという校長の釈明が報じられています。学校では72人にカウンセリングなどの禁煙指導をしていたこと、過去に喫煙によるボヤが発生していたことも明らかにされています。

 報道を見た限りでは、学校は喫煙指導室を作らず別の選択をすべきであったのか、疑問です。禁煙指導をしてもやめない生徒を退学処分にする、あるいは寮室と身体を毎日検査をする、などが考えられますが、どれも教育の観点からは好ましいものではないと思います。そして火災は人命にも危険が及ぶ可能性があることを考えれば、学校の選択は一概に間違っているとは思えません。

 今回の警察の介入は果たしてよい結果を生むのでしょうか。また警察の能力は有限であり、優先順位の高いものから使われるべきですから、その点からも今回の介入は理解できません。もっとも他にすることがないのであれば仕方がないですが。

 取るに足りない微罪を取り上げるかどうかは警察の判断次第ですが、放置した場合に比べ十分意味がある場合に限られるべきでしょう。そのような配慮をせず、法を杓子定規に適用する考えによるものならば大変困ったことです。外国ではあまり例がないと言われる医師の逮捕にまで発展した大野病院事件にも通じるものを感じます。これが「法化社会」の理想に至る道なのでしょうか。

 さらに、この警察の手入れの妥当性になんら疑問を抱くことなく、学校側の罪状のみを大袈裟に報道するメディアの見識に強い疑問を感じます。

 次は12月2日付朝日新聞の一面トップです。白抜きの大見出しは
『新車国内販売27%減』、『11月 下落幅、前月の倍』であります。読売もトップですが、経済紙の日経は小さな記事を3面に載せています(他は知りません)。

 朝日や読売のトップ報道は国民の心理をいっそう悲観的にします。経済に詳しい人は経済全体を表す鉱工業生産指数など、別の判断材料を知る機会があるので新車販売27%減は一部の現象として理解することができます。しかし一般紙のトップ記事は経済に関心の低い人にも読まれますから、27%減は経済全体を代表するものかのような印象を与え、経済の実情が実態以上に深刻に理解される可能性があります。悲観的な見方が広がり、それがさらに消費を減らすという悪循環を生む可能性があります。これこそ恐慌に至る道です。

 『われわれが恐れるべき唯一のことは、恐怖それ自体だ』-世界恐慌の最中に大統領に就任したルーズベルトは国民に向かってこう言ったそうです。恐怖や悲観は不況の大きな原因であり、バブルの生成や崩壊も楽観・悲観の心理によって引き起こされます。

 不況は社会に深刻な影響をもたらします。非正規労働者を解雇する動きが広がっているように立場の弱い層はより深刻な影響を受けます。資本主義が始まって以来、不況の克服は経済政策の最大の課題であり、総需要管理政策などによる努力が行われてきました。悲観的な見方を広める行為はその努力を台無しにします。12000円の給付金による需要創出効果など、不安心理の拡大によって吹き飛ぶことでしょう。

 事実を伝えることはむろん重要ですが、インパクトの強い派手な報道によって実態以上の印象を与えることは、不況の深刻化に手を貸すことになります。人を驚かすことを優先する誇大な報道は慎むべきでしょう。いつものことながら報道結果に対する配慮の不足、無責任さを感じます。