噛みつき評論 ブログ版

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Bクラスの人はCクラスの人を採用したがる・・・日米政府の人事の違い

2008-12-08 09:15:12 | Weblog
 『Aクラスの人はAクラスの人と一緒に仕事をしたがる。Bクラスの人はCクラスの人を採用したがる』
 シリコンバレーではこの「格言」をよく耳にすると梅田望夫氏は述べています。

 二流の人物が周囲に一流の人間を採用すれば自分の存在が霞んでしまう心配があります。誰しも自分の周りには引立て役を置きたいと思うことはあっても、自分が引立て役になりたいとは思わないでしょう。二流の人物が人事権を持つトップに座れば、二流、三流で占められ組織全体の機能が損なわれるという、とても興味ある言葉です。

 オバマ次期大統領は国務長官にヒラリー・クリントン上院議員、国家経済会議委員長に元財務長官サマーズなど、重要ポストに有能な一流人物を任命していると、好意的に受け止められています。

 シリコンバレーの格言を逆さまにすると、周囲に一流を集めるオバマ氏はまさに一流の人物ということになります。膨大なエネルギーを使う大統領選出のシステムの存在理由があったようです。ところで、短時間の「効率的な」選出システムによって生まれたわが麻生政権はどうでしょうか。

 「自分は麻生さんをやる。麻生さんには大変お世話になったことは忘れてはいけない」と公言し、麻生氏を首相に推したのは強い影響力を持つといわれている森元首相です。「お世話になったから」と首相に推された人物が適任者かどうかは近々明らかになるでしょう。まあ現在でも首相や閣僚が一流の人物ぞろいだと主張するのはちょっとばかり勇気が必要ですが。

 一方、オバマ氏はブッシュ政権のゲーツ国防長官の継続起用を決めたように、実務重視が鮮明です。またヒラリー・クリントン氏が国務長官になれば米国の外交政策がどう変化するかが話題になるように、長官の考えや手腕に関心が集まります。

 ところがわが日本では、大臣への期待はあまり大きいとは言えません。その理由のひとつとして考えられるのが在任期間の短さです。「大臣の平均在任期間」をキーワードに検索しますと、戦後の大臣の平均在任期間は1年に満たない(菅直人著『大臣』1998 )、法務大臣に限ると1952年から08年2月まで73人で平均在任期間は10ヶ月弱(大分合同新聞)、などの記述が見つかります。

 戦後の首相の平均在任期間は26ヶ月と先進国の中で最短クラスですが、大臣の在任期間は1年弱と、さらに短いわけです。大臣は省の頂点に立つわけですが、普通の人間が1年程度で文科省や国交省の組織や問題を理解することはまず無理でしょう。平均1年未満で交代する大臣の多くは理解するまでに任期を終えてしまいますから、官僚を主導していくような仕事は困難です。

 短い在任期間が慣習として定着した状態では、大臣になる人にとっても長期的な抱負をもって就任することが難しくなります。どうせ1年程度でやめるということであれば、勉強しようという意欲も萎え、飾り物の大臣が輩出されることになります。子育て中の人にまで大臣を頼まなくてもいいと思ったのですが、子育て中の人でもできるという意味にとった方がいいのかもしれません。

 官僚主導の弊害が言われ続けながら、メディアが数十年間続くこの仕組みに無関心であることが不思議です。不祥事の追求など重箱の隅をつつくような姿勢を続けた結果、「木を見て森を見ず」という習性が定着したのでしょうか。有能な人物が選ばれ、ある程度の期間仕事を任せるという観点からシステムを見直すという気運が起こってもよいと思います。