「2005年以来となった大規模な反日デモは、尖閣問題をめぐり東京であった抗議活動に対抗する狙いがある」
これは「反日デモ」と題した朝日の社説(10-19付)の一部です。反日デモとは10月16日、17日の破壊活動を伴った中国でのデモ騒動を指し、東京であった抗議活動とは、16日、東京都港区で行われた中国政府に抗議するデモ行進のことを指していると思われます(*1)。つまり日本のデモ行進が中国の反日デモの原因だと、この社説は指摘しています。
日本の抗議デモがなければ反日デモは起こらなかったから、反日デモの原因は日本にあると言わんばかりの文章です。しかしこの因果関係を裏付ける事実は何ひとつ示されることなく、記者は「東京であった抗議活動に対抗する狙いがある」と断定しています(後日、誤りが判明)。裏づけのない推定ならば「・・・の可能性がある」とか「理由のひとつと推定できる」などとするのがウソつきでない、普通の書き方です。
細かい点をつっつくようですが、これが権威ある筈の一流新聞の社説だからです。つまり一流紙の社説は優秀な記者が書き、さらに十分吟味された上で掲載されるものという信頼を裏切るものであるからです。主張はそれぞれ異なって当然ですが、前提になる事実にウソを書くことは許されません。検察官が証拠改ざんをしたり、研究者が実験データを偽って論文を書くのと同じで、大きく信用を失います。
この結末は22日付の同紙に載った「だが、反日デモの呼びかけは日本のデモの動きが中国で報じられる数日前には始まっていた」という記事にあるとおりであり、社説の「東京であった抗議活動に対抗する狙いがある」という記述が誤りであることは明らかです。
社説はデモの破壊行為やデモに対する中国当局の寛容さを型どおり非難しながらも、その原因は日本の抗議行動であるとしていますが、これは中国への温かい気持ちが表れています。まあ何年か先、中国の膨張政策が功を奏して、日本自治区というようなことになっても朝日はきっと優遇されることでしょう。まさに深謀遠慮というべきかもしれません。文革当時、他のメディアが次々と追放される中、中国と「親しい関係」の朝日だけが残留を許されたように。そして真っ先に取り潰しの憂き目にあうのは産経であることはまず疑いのないところでしょう。
ところで24日現在、電子版の社説はそのままであり、また訂正記事も見当たりません。どうやら、頬被りの気配が濃厚です。ついでながらもうひとつ朝日新聞について指摘したいことがあります。これは政治的な意図や誠実度とは別の問題で、単なる学力の低さを物語るものですが、一面トップの記事であり、重要なものなので指摘しておきます。
10月21日の一面トップの「レアアース 停滞深刻」という記事の中に中国商務省の話として、以下のような記述があります。
『中国はレアアースの輸出では世界の9割以上を占めるが、備蓄では3割程度。チャイナデーリーは19日、同省関係者の話として「このままでは15~20年で(中国の)備蓄が枯渇する」と、制限する事情を伝えている』
恐らく埋蔵量と「備蓄」とを取り違えているのだろうと思います。言うまでもありませんが、埋蔵量は地下に埋蔵されている量であり、備蓄(量)は需給の変動に備えるため採掘した物や精製した物を一時的に貯えている量を指します。
これは記者をはじめとしてこの記事の内容に関係した全員が意味をまるっきり理解していなかったことを示しており、基礎学力に深刻な問題があることを疑わせます。また、こちらも電子版にそのまま掲載中であり、訂正記事もないようですから、誤りの自覚すらないのかも知れません。
ここで私が指摘した二つのこと自体はたいしたことでないかもしれません。検察の証拠改ざんのインパクトにはとても及びません。しかし朝日新聞の誠実さや理解能力、つまり信頼度を測るものとして少しはご参考になるのではないかと思う次第です。
(*1)2800人が参加したとされるデモなのに、なぜかあまり報道されませんでした。また前回、10月2日に実施された同趣旨のデモは主要メディアに完全に黙殺されました。(参考拙文尖閣問題、反中デモを報道せず)
これは「反日デモ」と題した朝日の社説(10-19付)の一部です。反日デモとは10月16日、17日の破壊活動を伴った中国でのデモ騒動を指し、東京であった抗議活動とは、16日、東京都港区で行われた中国政府に抗議するデモ行進のことを指していると思われます(*1)。つまり日本のデモ行進が中国の反日デモの原因だと、この社説は指摘しています。
日本の抗議デモがなければ反日デモは起こらなかったから、反日デモの原因は日本にあると言わんばかりの文章です。しかしこの因果関係を裏付ける事実は何ひとつ示されることなく、記者は「東京であった抗議活動に対抗する狙いがある」と断定しています(後日、誤りが判明)。裏づけのない推定ならば「・・・の可能性がある」とか「理由のひとつと推定できる」などとするのがウソつきでない、普通の書き方です。
細かい点をつっつくようですが、これが権威ある筈の一流新聞の社説だからです。つまり一流紙の社説は優秀な記者が書き、さらに十分吟味された上で掲載されるものという信頼を裏切るものであるからです。主張はそれぞれ異なって当然ですが、前提になる事実にウソを書くことは許されません。検察官が証拠改ざんをしたり、研究者が実験データを偽って論文を書くのと同じで、大きく信用を失います。
この結末は22日付の同紙に載った「だが、反日デモの呼びかけは日本のデモの動きが中国で報じられる数日前には始まっていた」という記事にあるとおりであり、社説の「東京であった抗議活動に対抗する狙いがある」という記述が誤りであることは明らかです。
社説はデモの破壊行為やデモに対する中国当局の寛容さを型どおり非難しながらも、その原因は日本の抗議行動であるとしていますが、これは中国への温かい気持ちが表れています。まあ何年か先、中国の膨張政策が功を奏して、日本自治区というようなことになっても朝日はきっと優遇されることでしょう。まさに深謀遠慮というべきかもしれません。文革当時、他のメディアが次々と追放される中、中国と「親しい関係」の朝日だけが残留を許されたように。そして真っ先に取り潰しの憂き目にあうのは産経であることはまず疑いのないところでしょう。
ところで24日現在、電子版の社説はそのままであり、また訂正記事も見当たりません。どうやら、頬被りの気配が濃厚です。ついでながらもうひとつ朝日新聞について指摘したいことがあります。これは政治的な意図や誠実度とは別の問題で、単なる学力の低さを物語るものですが、一面トップの記事であり、重要なものなので指摘しておきます。
10月21日の一面トップの「レアアース 停滞深刻」という記事の中に中国商務省の話として、以下のような記述があります。
『中国はレアアースの輸出では世界の9割以上を占めるが、備蓄では3割程度。チャイナデーリーは19日、同省関係者の話として「このままでは15~20年で(中国の)備蓄が枯渇する」と、制限する事情を伝えている』
恐らく埋蔵量と「備蓄」とを取り違えているのだろうと思います。言うまでもありませんが、埋蔵量は地下に埋蔵されている量であり、備蓄(量)は需給の変動に備えるため採掘した物や精製した物を一時的に貯えている量を指します。
これは記者をはじめとしてこの記事の内容に関係した全員が意味をまるっきり理解していなかったことを示しており、基礎学力に深刻な問題があることを疑わせます。また、こちらも電子版にそのまま掲載中であり、訂正記事もないようですから、誤りの自覚すらないのかも知れません。
ここで私が指摘した二つのこと自体はたいしたことでないかもしれません。検察の証拠改ざんのインパクトにはとても及びません。しかし朝日新聞の誠実さや理解能力、つまり信頼度を測るものとして少しはご参考になるのではないかと思う次第です。
(*1)2800人が参加したとされるデモなのに、なぜかあまり報道されませんでした。また前回、10月2日に実施された同趣旨のデモは主要メディアに完全に黙殺されました。(参考拙文尖閣問題、反中デモを報道せず)