噛みつき評論 ブログ版

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5号機冷却ポンプ停止、人がいなければ気づかないの?

2011-06-02 10:13:33 | マスメディア
『東京電力は29日、冷温停止中の福島第1原発5号機で、原子炉と使用済み核燃料プールを冷却するための仮設の海水ポンプが28日に故障したと発表した。モーター部分の絶縁不良が原因とみられる。原子炉とプールの冷却機能が15時間程度失われた結果、原子炉冷却水の温度は29日午後0時49分に94・8度、プールは正午現在で46・0度まで上昇した。東電は同日午前8時過ぎから予備ポンプに切り替える作業に着手。同日午後0時31分、予備ポンプが起動し、午後0時49分、冷却を開始した。その結果、午後4時現在で原子炉冷却水は64・9度となった。
 東電によると、故障したのは「残留熱除去系」と呼ばれるポンプで、原子炉とプールで熱くなった水を、海水を引き込み12時間ごとに交互に冷やしている。28日午後9時14分、冷却先をプールから原子炉に切り替えるため作業員がパトロールしている最中に停止しているのを見つけた』(毎日新聞 2011年5月30日より)

 あまり注目されることのない小さな記事ですが、ちょっと驚くようなことが含まれています。それは海水ポンプの故障が作業員のパトロールによって発見されたという事実です。なぜなら、このような重要機器の場合、故障すれば直ちに制御室などに警報が出るように設計するのが常識だからです。そして異常警報はモーター電流の変化やポンプの吐出圧力、水の流量など、複数の箇所から異常を検出して万全を期すのが普通です。

 このポンプは原子炉とプールの冷却水を冷却するための熱交換器へ海水を送るためのものらしく、停止してもすぐに危機的な状況になるわけではありませんが、たとえ仮設ポンプであっても人間が見にくるまでわからないシステムというのは実に不可解です。

 実際は「難しい諸事情」があって素人には理解できないという可能性もあるかもしれません。しかし新聞記事を見るかぎり、この東電の人海戦術に頼る管理体制には強い不安を感じます。津波の数日後、炉心に冷却水を送り込むポンプ車の燃料が切れ、1時間ばかり冷却水が途絶えたことがありました。このときも管理体制が心配になりましたが、混乱時なので止むを得ない面もあったでしょう。しかし今回は2ヵ月以上経っています。

 一方、重要な機器の故障が監視装置ではなく、パトロール中の作業員によって運良く発見されたことに対し、記者の誰ひとりとして疑問を持たなかったことはマスコミの理解力の低さを物語ります。

 数多(あまた)の情報の中から重要なもの、必要なものを選別して読者に伝えるのがメディアの仕事です。内容を理解できない人達が選別作業をしているとなれば、こちらも大きな不安材料であります。はたして必要なことが適切に伝えられているのかと。