噛みつき評論 ブログ版

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首相、不退転の決意、一夜で心変り

2011-12-08 10:36:21 | マスメディア
 12月6日、日経の朝刊一面に『消費税「不退転の決意」』という見出しで、「社会保障と税の一体改革は際限なく先送りできるテーマではない。不退転の決意で臨む」という野田首相の「力強い」言葉が載っていました。

 続いて翌7日、朝日の朝刊には「景気悪ければ消費増税凍結」との見出しで、野田首相は消費増税法案に景気が悪ければ増税を中止できる「景気条項」を盛り込む方針を固めたと小さく報じられました。事実上の大転換にもかかわらず、なぜかマスコミは極めて平静です。マスコミなど玄人は「不退転の決意」など、端から信用していなかったということでしょう。

 素人が「不退転の決意」という言葉から、少しは骨のある人物かと思ったのも束の間、一夜にして心変わりし、前日の首相の言葉によれば「先送りできるテーマではない」消費増税は事実上先送りされる可能性が強くなりました。

 「不退転の決意」という強い言葉がこれほど軽く使われて、誰も不思議に思わないのは政治家の言葉の軽さに定評が出来ているせいでしょう。「しっかり」「前向きに」などの言葉と同じで、言っても言わなくても同じ類でしょう。

 また国会の質疑においては、質問者の質問に対して誠実な答弁は少なくて、はぐらかしや抽象的な答弁が目立ちます。答えになっていない答弁に厳しく再質問する議員はごく少数です。質問趣意書に基づいて予め用意された、しかし面白くもない形式的な答弁は議論になっていないと感じることが多く、国会中継を見ようという気持ちになりません。

 政治家の記者会見においても同様です。記者の質問に対する答えが答えになっていない場合でもほとんど再質問されません。こういう現場に来るのはたいてい若い記者ですが、彼らの能力の問題なのか、あるいは再質問をさせない慣習でもあるのか知りませんが、このことが政治家の言葉の軽さを「支えて」きたのでしょう。つまり言語能力の低い人でも政治家になれる道を拓いたと思われます。失言する政治家が輩出する現象はこの「成果」だと言えるでしょう。

 英国のトニー・ブレア元首相は草稿なしで1時間も演説が出来たといわれますが、そこまでは無理にしても、棒読みがジャパニーズ・スタンダードになっている現状は政治家のレベルを象徴しているようです。

 国会でも記者会見でも、あまりシビアな議論が行われると多くの政治家がついていけないので、馴合いの関係が作られたのでしょうか。政治家の言葉が信用されないと、政治そのものが信用を失うことは自明です。政治の信用低下は周知のことですが、マスコミがその片棒を担いだと言ってもよいでしょう。