噛みつき評論 ブログ版

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ノイジーマイノリティ

2012-09-03 10:00:55 | マスメディア
 8月8日付の毎日新聞の潮田道夫氏のコラム「原発ゼロが世論か」はなかなか興味深いもので、一部を引用します。

 「世論の計測は難しい課題である。一般的なのは無作為抽出による世論調査だ。6月初めの毎日新聞を皮切りに7月中旬の読売新聞までマスコミの調査が7本ある。
 このうち「ゼロ」の選択が過半を占めるのは、テレビ朝日の57%だけ。ほかは毎日25%、読売31%と29%、産経30%、NHK34%、朝日42%である。これを見る限り「民意はゼロ」とは言いにくい。
 これに対し、デモやパブリックコメント、意見聴取会のアンケート、さらには「討論型世論調査」などは「ゼロ」の比率が高い。意見聴取会のアンケートでは70%だった。これが世論をどこまで代表しているか微妙だが、すごい熱気だ。それが政治の意思決定に影響力を持ち始めている」

 この「ゼロ」というのは2030年の電力に占める原発割合を3つの選択肢から選んだものです。また政府が公募したパブリックコメントは約8万9千件が寄せられ、ここでは87%が「ゼロ」であったそうです。

 ここで二つの疑問が生じます。まずは上記の7本のマスコミの調査ですが、あまりにも差が大きいということです。毎日の25%からテレ朝の57%までの大差はとても納得できるものではありません。テレ朝と朝日が1位と2位を占めていますが、とりわけ反原発に熱心な朝日系の調査で「ゼロ」が大幅に多くなるというのは何か不自然です。

 調査結果を捏造するというのは考えにくいですが(バレた時の信用失墜が大きいので)、質問の仕方や電話の時間帯を工夫するなどである程度の「操作」は可能でしょうが、それにしてもこの大差を説明することは困難です。まあここから導かれる結論はこんな調査は信用できない、ということでしょう。

 もうひとつは「ゼロ」の比率が意見聴取会では70%、パブリックコメントでは87%であるのに対し、一般的な無作為抽出による世論調査の25%~34%(信頼性に疑問のある朝日系は除外)に対し、これまた2倍以上の大差があることです。この点は「反対者の声は大きい」と事前に予想されていたことですが、それにしてもこの大差は予想以上です。

 ここから導かれる結論は、反対意見は5割引ないし7割引程度で考える必要がある、ということでしょう。ニクソン元大統領のサイレント・マジョリティ(声なき多数)という言葉、あるいは激しい安保反対騒動の最中、岸元首相の「国会周辺は騒がしいが、銀座や後楽園球場はいつも通りである」という発言と同様です(多くのメディアを含む激しい反対の中で安保改定を強行した岸元首相は激しい批判を受け辞任に追い込まれましたが、後年、安保条約と共に評価されるようになりました)。

 一方、毎日のコラムには
「これが世論をどこまで代表しているか微妙だが、すごい熱気だ。それが政治の意思決定に影響力を持ち始めている」とありますが、多分その通りなのでしょう。但し、それはノイジイ・マイノリティ(うるさい少数派)を持ち上げ、政治的な影響力を持たせようとするメディアの加担があればこそ、であります。

 メディアが政治を動かしてやろうと自分まで熱くなるのは迷惑なのであります。社説で意見を述べるのはいいのですが、恣意的な編集など、いかがわしい方法で自らの考えに誘導するのは邪道です。あくまでその名の通り、情報の媒介者であるべきです。

 むろんメディアの見識・判断力がまともであればそれもよいのですが、3年前、民主党を持ち上げて「あの鳩山内閣」を誕生させたことだけを見ても、それは実証済みというべきでしょう。