5月28日、国の有識者会議は南海トラフ地震の予知が困難と認め、備えの重要性を指摘する最終報告書をまとめました。そこでは巨大津波への対応や家庭での1週間分以上の食糧備蓄などを求めています。被害想定は死者32万人、損失220兆円と想像を絶するものです。ただしこれはM9.1の巨大地震が前提となっています。高知県では34mの大津波が来るなどと騒がれたもので、対策には膨大な費用が必要です。
ところがこの4日前、5月24日の政府の地震調査委員会は、南海トラフで30年以内にM8~9の大規模地震が発生する確率は60~70%であるが、M9.1の地震は少なくとも過去数千年間は確認できておらず、確率は算出しないと発表しています。算出しないではなく、できないと言った方が正確でしょう。
発生メカニズムの解明も観測も不十分、しかも過去に例のない地震の発生確率が求められると考える方がおかしいわけです。しかし有識者会議の被害想定の前提となったM9.1クラスの地震は千年に一度の確率で起きるとされていました。
有識者会議は千年に一度の確率を前提に被害を想定し、地震調査委員会はその確率は算出できないと言っているわけです。両者はバラバラに動いているようで、どちらを信用してよいかわかりません。なぜかメディアもこの食い違いに言及することなく、有識者会議で示された1週間分の食糧などの備蓄品目を写真入りで紹介しています。
例えばカセットコンロのボンベが1人あたり9本必要とありますが、4人家族では36本となります。各家庭にこれだけの備蓄があれば火事の際に危険ではないのでしょうか。次々と爆発するでしょう。また長期保存による腐食のためにガス漏れが生じ火災となる心配もあります。
食料については21食+補助食品、4人では84食分を求め、「パンやシリアルなどを組み合わせて飽きがこないように」というご親切な指示までついています。しかしそんな稀な事態にまで快適な生活を求めようというのでしょうか。保管場所も維持コストも必要です。有識者の常識は凡人のそれとはいささか異なるようです。
話がそれましたが、今回の地震調査委員会の発表が正しければ、M9.1を前提にした昨年の内閣府の発表は最重要な根拠を失ったことになります。我々は起きた記録のない巨大地震を心配して対策を進めてきたというわけです。千年に一度という確率を算出した根拠を改めて明示する必要がありましょう。M9地震のエネルギーはM8の約32倍にもなり、たいして違わないというわけにはいきません。
マスメディアには危険を過大に報道する傾向があるといわれています。危険、危険と不安を煽っていれば視聴率も上がり、もしも危険が現実のものになったときも「それ見たことか」と胸を張れます。逆に安全と言っていれば視聴率は下がり、外れた場合は非難されます。危険を煽る報道はノーリスクでかつ儲かる、最良の方法なのです。
メディア報道には常に不安を煽る方向への偏り(バイアス)があります。そのためか、あるいは確率の意味を理解できないためか知りませんが、地震確率の食い違いに言及しないのは報道機関の責務を果たしているとはいえません。
地震調査委員会を信じれば、「M9.1地震に備えてください」と言うことは「隕石の落下に備えてください」と言うのと同レベルのことと思われます。
ところがこの4日前、5月24日の政府の地震調査委員会は、南海トラフで30年以内にM8~9の大規模地震が発生する確率は60~70%であるが、M9.1の地震は少なくとも過去数千年間は確認できておらず、確率は算出しないと発表しています。算出しないではなく、できないと言った方が正確でしょう。
発生メカニズムの解明も観測も不十分、しかも過去に例のない地震の発生確率が求められると考える方がおかしいわけです。しかし有識者会議の被害想定の前提となったM9.1クラスの地震は千年に一度の確率で起きるとされていました。
有識者会議は千年に一度の確率を前提に被害を想定し、地震調査委員会はその確率は算出できないと言っているわけです。両者はバラバラに動いているようで、どちらを信用してよいかわかりません。なぜかメディアもこの食い違いに言及することなく、有識者会議で示された1週間分の食糧などの備蓄品目を写真入りで紹介しています。
例えばカセットコンロのボンベが1人あたり9本必要とありますが、4人家族では36本となります。各家庭にこれだけの備蓄があれば火事の際に危険ではないのでしょうか。次々と爆発するでしょう。また長期保存による腐食のためにガス漏れが生じ火災となる心配もあります。
食料については21食+補助食品、4人では84食分を求め、「パンやシリアルなどを組み合わせて飽きがこないように」というご親切な指示までついています。しかしそんな稀な事態にまで快適な生活を求めようというのでしょうか。保管場所も維持コストも必要です。有識者の常識は凡人のそれとはいささか異なるようです。
話がそれましたが、今回の地震調査委員会の発表が正しければ、M9.1を前提にした昨年の内閣府の発表は最重要な根拠を失ったことになります。我々は起きた記録のない巨大地震を心配して対策を進めてきたというわけです。千年に一度という確率を算出した根拠を改めて明示する必要がありましょう。M9地震のエネルギーはM8の約32倍にもなり、たいして違わないというわけにはいきません。
マスメディアには危険を過大に報道する傾向があるといわれています。危険、危険と不安を煽っていれば視聴率も上がり、もしも危険が現実のものになったときも「それ見たことか」と胸を張れます。逆に安全と言っていれば視聴率は下がり、外れた場合は非難されます。危険を煽る報道はノーリスクでかつ儲かる、最良の方法なのです。
メディア報道には常に不安を煽る方向への偏り(バイアス)があります。そのためか、あるいは確率の意味を理解できないためか知りませんが、地震確率の食い違いに言及しないのは報道機関の責務を果たしているとはいえません。
地震調査委員会を信じれば、「M9.1地震に備えてください」と言うことは「隕石の落下に備えてください」と言うのと同レベルのことと思われます。