噛みつき評論 ブログ版

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朝日新聞の広告倫理

2013-06-17 10:04:57 | マスメディア
 身につけるだけでどんな病気も治るネックレス、持てばお金が貯まっていく財布、理想の相手が見つかるブレスレット、近いうちにこのような怪しい商品の広告が一流新聞にあふれるようになるかもしれません。

 6月9日の朝日新聞(大阪版)に載った全面広告はそんな時代の到来を予想させるものです。広告は、いまは「180年に一度の財運好転のチャンス年到来」ということであり、「金運四神ブレス」という腕輪を買えばそのチャンスをつかむことができる、と理解できる内容です。

 怪しげな宗教が、これを買えば不幸から逃れることができるといって数万~数千万円の多宝塔などを売りつけた事件が何度もありました。「金運四神ブレス」の商法は薄利多売という違いはありますが、基本的にそれと同じです。むろんそのような効果が期待できるわけはありませんから、詐欺同様のものと考えられます。

 私にとって、こんな詐欺同然の商法に一流新聞が協力している事態は、とても「斬新」に映ります。朝日新聞は勇敢にも未開拓の分野へ新たな一歩を踏み出したと言うべきでしょう。

 さて朝日新聞のもうひとつ新たな試み(それほど新しくないかもしれませんが)を紹介します。6月12日(大阪版)に掲載された全面広告です。「アレルギーケア最新NEWS 2013」として「アレルギーの名医2人が語る 話題のアトピー対策『L92乳酸菌』」と題し、2人の医学博士の対談が載っています。

 L92乳酸菌のアトピー性皮膚炎に対する有効性がグラフや図を使って詳細な説明があり、アトピーに関心ある読者を標的にしたものだと推定できます。この広告の掲載主体は「環境・生活習慣型アレルギーケアフォーラム」とされ、営利団体とは思えません。左上の「広告」という文字を見なければまず広告とは思えない体裁です。

 下の方に「L92乳酸菌の詳しい情報はインターネットで。www.alle-forum.jp」とあります。そのサイトによると、このフォーラムは情報発信をしていくことを目的に2007年11月に設立された第三者機関で、メンバーは11人の医療関係者、協賛企業はカルピス(株)とされています。ただ2008年12月4日以後の活動報告はありません。医療関係者が多額の費用を払って広告する必要は考え難く、実際の広告主体はカルピス(株)と推定できます。

 そして3日後の6月15日、カルピスの名前でL92乳酸菌製剤「アレルケア」の全面広告が朝日に掲載されました。12日に記事のような体裁で医学者の対談を載せてL92乳酸菌の有効性を説き、第三者の客観意見であるように誤解を誘った上、時間を置いて本来の広告を載せるという、手の込んだ手口です。

 カルピスのケースは読者の誤認を故意に誘導する手法であり、また責任の所在が不明確です。「金運四神ブレス」は非科学的または迷信に類するものです。前者は日本新聞協会が制定する新聞広告倫理綱領/新聞広告掲載基準(下に記載)の1項、及び3項の1に、後者は9項に抵触していると考えられます。まあこんなものを持ち出さなくてもごく普通の倫理観や矜持、恥を知る心さえあればわかることでしょうけれど。

 新自由主義は「とにかく儲かればよい、強欲は善」という考えをもたらしましたが、実は朝日新聞はひそかな賛同者なのかもしれません。そう考えないとこれらの広告は理解できないわけです。まあこのような広告を載せながら正義を振りかざすという度胸には驚嘆しますが。

[新聞広告倫理綱領/新聞広告掲載基準]より抜粋

以下に該当する広告は掲載しない。
1. 責任の所在が不明確なもの。
2. 内容が不明確なもの。
3. 虚偽または誤認されるおそれがあるもの。
誤認されるおそれがあるものとは、つぎのようなものをいう。
1. 編集記事とまぎらわしい体裁・表現で、広告であることが不明確なもの。
・・・・・
9. 非科学的または迷信に類するもので、読者を迷わせたり、不安を与えるおそれがあるもの。