噛みつき評論 ブログ版

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嘘つきのコスト

2016-05-16 09:01:40 | マスメディア
 三菱自動車工業が燃費データに関し、嘘をついていたことが発覚し、経営の危機に陥りました。結局、日産の資金援助によって危機は回避されましたが、独立を失うことになりました。以前のリコール隠しという前科の影響もあったかもしれませんが、嘘つきの代償はまことに高価です。

 雪印食品による牛肉偽装事件、使用期限を過ぎた牛乳を使った不二家、 産地偽装や賞味期限切れ食品の販売した船場吉兆、牛肉ミンチの品質表示偽装事件のミートホープ、これらの企業は嘘をついたことがバレて、滅びるか、経営危機に陥りました。

 不二家の場合、健康被害を出したわけでもなく、社内規定の期限を1日過ぎただけでしたが、当時流行したマスコミの偽装バッシングによって過酷な仕打ちを受けました。TBSの「みのもんたの朝ズバッ!」は「賞味期限切れのチョコレートを回収し、溶かして再形成した上賞味期限を書き換えて再出荷していた」等と事実でないことまで捏造しました(後に不二家に謝罪)。バッシングに夢中になる暗い情熱が感じられます。

 抵抗の手段を持たない弱い立場の企業に対し、倒産せよと言わんばかりの激しいバッシングからはサディスティックなものを感じこそすれ、罪のない従業員やその家族、関連企業の苦境に対する配慮は感じられません。背景には企業という組織を1人の人格、1人の悪人としてとらえる単純思考があります。子供や「考えない人」によく見られる現象です。

 これら一連の事件、それに対するメディアの激しいバッシングがあったためでしょうか、以後、嘘に対して厳しい目が注がれるようになったように感じます。世間が厳しくなれば、嘘に対するメディアの関心はさらに強くなります。嘘のニュース価値が上がり、バッシング効果も高まるからです。そして過激なメディア報道がまた厳しさを加速させる、という循環が起きるのかもしれません。

 ところが一昨年、朝日新聞の、慰安婦に関する虚偽報道と事故直後の福島第一発電所で「所長命令に違反、原発撤退」「福島第一所員の9割」とした虚偽報道が明らかになりました。朝日は嘘を認めて謝罪しましたが、上記の企業のように経営危機にはなりませんでした。

 嘘つきの情報産業は極めて深刻な問題です。三菱自動車の場合は性能表示に5~15%の誤差があったわけですが、乗用車を注文してトラックが納車されたわけではありません。商品の機能説明の一部に嘘があったわけです。しかしメディアの場合、情報が商品ですから、意図的だと考えられる虚偽報道は商品そのものが意図的な偽物であるわけです。乗用車を注文したらトラックが届いたようなものです。しかも国益を大きく棄損した重大な誤報であるにもかかわらず、経営危機もありません。長期的な販売数の低落傾向に多少の弾みをつけた程度でしょう。

 製造業などの場合、嘘つきは会社の存続を許されないほど過酷な制裁を受けます。警察や行政の処分もあるものの、実質的な制裁を行うのはマスメディアです。朝日の場合、新聞を読めば食中毒を起こすなどの直接的な被害がないこともありますが、他メディアによるバッシングが他の嘘つき企業の場合に比べで、弱かったと感じます。逆の立場になった場合の反撃を恐れているのでしょうか。

 朝日の虚偽報道問題は一種の確信犯的なものが根っこにあるだけに、今後も社会に深刻な影響を与える重大な問題です。とりわけNHKは検証番組を作るべき立場であると思うのですが、現在まで素知らぬ顔です。暗黙の互助協定があるのでしょうか。