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戦争危機の過少報道

2017-04-17 00:22:24 | マスメディア
 米国と北朝鮮の間で緊張が高まって、一触即発の危機にあるとも言われています。双方の代表であるトランプ大統領と金正恩第一書記、いずれも何をするかわからない人物であることが危機を予測困難にしています。戦争が起きる確率など計算しようがないというわけです。確率が不明であるが、その結果が極めて重大であるとき、できる限りの準備をするのが当然です。

 M8以上の南海トラフ大地震が起きる確率は今後30年以内に60~70%、今後10年以内に20%程度とされています。つまり大雑把に言うと、ここ10年間は1年あたり2%程度の確率と考えてよいでしょう。それでも地震への準備は進められています。98%起きなくても、起きた時の重大さを考えれば2%でも準備するのが当然です。

 北朝鮮はやがて米国を核攻撃する手段を持つようになるとされています。米国はそれまでにその脅威を取り除く意志がある筈です。中国からの圧力が成功しなかった場合、単独での軍事攻撃に踏み切る可能性が低いとは言えないでしょう。先延ばしは北朝鮮の攻撃能力を高め、米国だけでなく韓国や日本の安全をさらに脅かします。

 一方、米国が主導する政権が北朝鮮にできるのを嫌って中国が先に北朝鮮を攻撃する可能性もないとは言えないと思います。中国が北京-平壌間の国際定期便の一時停止したり、北朝鮮との国境に中国軍が終結しているとの報道もあります。今後どうなるか、予測は全く困難です。

 つまり日本が戦争に巻き込まれる可能性は無視できるほど低いとはとても言えないわけです。しかし一部を除けば、多くのメディアは戦争の可能性をあまり伝えていません。とくに左派メディアはその傾向が強いと感じます。この時期にスケート選手の引退報道を2日間トップニュースで報道した姿勢は理解に苦しみます。朝日・毎日は北朝鮮関連のニュースをあまり載せず、多く載せている産経と対照的です。

 護憲を主張するメディアは憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」を金科玉条のごとく扱ってきました。日本を攻撃する諸国民の不公正と不正義などあってはならないのではないでしょう。こんな国が存在すれば憲法前文や9条の存在が危うくなります。自衛隊の予算拡大に反対することも困難になります。

 このような体質は攻撃される危機を出来るだけ小さく見せようという傾向を生じます。しかし攻撃の可能性がないという根拠もなく、また攻撃を受ける確率が計算不可能である以上、注意を喚起すべきなのは当然です。意図的に危機を過少に報道することは国民に対する重大な背信行為であり、国民を必要以上に危険にさらすことになります。国民の安全より党派的な主張を優先するバカげた行為です。

 危機を報じてそれが杞憂に終わったとしても、適切に伝えずに危機を拡大してしまうよりはマシです。北朝鮮のミサイルに備えて避難訓練をしているのは私の知る限り秋田県男鹿市だけです。株価も日本が戦争の影響を受けるという地政学リスクが織り込まれて影響を受けているようです。漫然と報道を見ているだけでは戦争の危機などほとんど感じられません。これが実態を正確に反映したものであればいいのですが。