噛みつき評論 ブログ版

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想像力欠如のNHK

2019-02-03 22:18:42 | マスメディア
  朝焼小焼だ
  大漁(たいりょう)だ。
  大羽鰮(おおばいわし)の
  大漁だ。

  浜(はま)はまつりの
  ようだけど
  海のなかでは
  何万(なんまん)の
  鰮(いわし)のとむらい
  するだろう。
  
 これは金子みすゞの詩「大漁」である。有名なものらしくご存知の方も少なくないと思う。私は詩をほとんど知らないが、NHKの動物番組を観たときだけは、この詩「大漁」を思い出す。最近のNHKの動物番組では強い動物が餌になる弱い動物を襲い、食い殺す場面がしばしば出てくる。私はつい食べられる動物の気持ちを想像してしまう。それが嫌なので、動物番組を観なくなった。

 確かに「いわし」のことなど、気にしなくても生きていく上で何の支障もない。しかし、金子みすゞはものごとの二面性、ここでは他の生きもの対して想像力を働かせることの重要性を示したかったのであろう。

 NHKの動物番組で捕食場面が多く出てくるのは、そのような場面を撮影するのは大変であり、価値あるものだと思っているからなのだろう。きっとその映像は高い値段が付くのだと思う。また自然の営みを描いているという意識があるのかもしれない。けどお茶の間で見ているのは一般の読者である。毎回のように残酷な場面を見せられるのは不快である。捕食場面を撮影する人も、それを放送で流す人も、食べられる動物の気持ちを想像しない人たちなのだろう。

 昔、人間が狩りをして生活していた時代、食物となる動物の気持ちを想像するなどなかったと思う。日常のこと、あたりまえのことであったわけである。それどころか狩りは楽しみでさえあったろう。現在でも一部の人間は狩りを楽しんでいる。さらに少数だが、人間を平気で殺傷する犯罪者もいる。恐らく相手の気持など、考えようとしない人たちなのだろう。しかし大多数の人はこのような残酷さに不快を感じるようになった。また、銃を使うなど、明らかに有利な立場での動物殺害は卑怯だと思う感性もある。

 NHKの動物番組は子供も観ている。それは教育的な意味を持つ。見せられるのは弱肉強食の自然の世界であって、残酷さを排し、秩序が保たれた人間の世界ではない。その残酷さを見せることで子供達がどんな影響を受けるだろうか。自然の持つ残酷さをできるだけ排除する人間の世界を肯定する受け止め方もあるが、逆に自然が残酷なら残酷なことをしてもいいのだという理解もあるだろう。子供が多く見る番組だけにNHKは十分考えているのだろうか。NHKはインパクトの強い映像、珍しい映像、センセーショナルな映像を優先しているように見える。それが視聴率のためなら問題である。