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報道の基準とは

2014-02-03 09:27:57 | マスメディア
 昨年の12月5日、消費者庁は摂取するだけで痩身効果が得られると宣伝したサプリメント「夜スリムトマ美ちゃん パワーアップ版」に合理的な根拠がないとし、販売会社に対して景品表示法違反(優良誤認)で再発防止などを求める措置命令を出しました(消費者庁の発表資料)。
 この商品は芸能人を起用した宣伝や、テレビコマーシャルによって、約2年ほどで約50億円を売り上げたというからたいしたものです。

 痩身効果の根拠を否定されたわけですから、効果を否定されたと同じです。効かないものを効くと騙して販売していたのなら詐欺です。アメリカでは違法表示で得た利益を没収する制度があるそうですが、措置命令だけとはずいぶんご寛大なことです。これでは儲け得ということになり、再発防止ではなく再発促進になりかねません。

 昨年のホテルレストランでの食材偽装でも同様の措置命令がでましたが、双方の悪質度には大差があります。食材偽装は産地や品種を偽っただけで、満足感や栄養価値に被害があったわけでありません。自主申告した阪神阪急ホテルズ系列の場合は被害額も数十分の一です。

 消費者庁による同等の扱いも疑問ですが、マスコミの報道ぶりは凡人の理解を超越するものでした。レストランの食材偽装では社長を大勢の記者が長時間吊し上げ連日連夜大騒ぎしたのに対し、悪質度でも金額でもはるかに上の「夜スリムトマ美ちゃん」事件は小さく目立たない報道で、社長の吊し上げもありませんでした。

 アマゾンではまだ売っていて、12月6日以降に12件のレビューがありますが、そのうち措置命令のことを知っているのが3件に過ぎず、9件は知らずにレビューを書いているものと思われます。報道量の不足が詐欺同然の商法を後押ししているわけです。この寛容さは、食材偽装での社長のクビが飛ぶほどの、しつこい報道と対照的です。

 アマゾンのレビューでは星5つが15、星4つが9、星3つが17、星2つが9、星1つが19で平均は星3つです。こんなものでも肯定的な評価が多いことに驚きます。楽天でも平均評価は3.69です。こんな会社なのでサクラもかなりあると思いますが、肯定的な評価も一定数あるものと考えられます。健康食品などを評価することの難しさと共に、レビューがあまり信用できないことがわかります。

 昨年、クローズアップ現在で、架空の投資話で金をだまし取る事件を取り上げていました。それによると詐欺グループは健康食品購入者の名簿からカモにする相手を見つけていたそうです。健康食品購入者は騙されやすいということなのでしょう。なかなか興味ある事実です。

 話がそれましたが、マスメディアは何を基準に報道しているのかを考えさせられた事件でした。悪質度や被害の大きさ、あるいは被害拡大を防ぐための周知よりも優先するものがあるようです。多分、それは社会の上位の者に対するルサンチマン(憎悪、嫉妬などの鬱積)に基づくものなのでしょう。高い地位を占める者の小さな悪を暴いて読者・視聴者を驚かせ、溜飲を下げさせるようなものです。

 しかしそのような報道に誠実さや良心、知性を感じることはできません。一流とされるメディアも報道の基準はスポーツ新聞と同レベルのようです(スポーツ新聞には悪いですが)。またそんなものに公共財ともいえる報道機能の多くを使うことも疑問問題です。より必要性の高い報道が減るわけですから。


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